自分の中で“生きる言葉”       6月5日分

 先日、私の看護師の恩師である川嶋みどり先生(日本赤十字看護大学学部長)に久々に会いました。『ガルーダ・サポーターズ』の顧問になっていただくお願いのためです。インドネシアから来日している看護師候補者たちは、たぶん自分の中で悶々としているのではないかと勝手に想像しています。だって、来日しているのは、自国で3・4年看護大学で勉強をして国家資格をもってバリバリ現場で活躍してきた人です。それが日本に来て看護師としてではなく、看護助手・無資格者として補助的な仕事(汚物洗いなど)しかできないわけです。(日本の国家試験合格までは)資格者・プロとしてのプライドは世界共通でしょう。私だったらたぶん・・・。このEPAの看護師・介護職候補者問題を考えるとき、単なる労働者・研修者としてではなく、専門職・プロの問題としても考えなければならないわけです。
そんな時、顧問には日本の看護界の大御所である川嶋先生が最適だと思ったのです。川嶋先生は、全体の説明を聞いてくださり、「わかったわ。EPAにはいろいろ意見があるけれど、来日した看護師たちを尊重することは大事なことです。顧問になりましょう」と承諾してくださいました。
 超多忙の川嶋先生に、恐る恐る「ガルーダ・サポーターズの設立のつどい」に一言メッセージを!とメールしました。そしたら、即返信がきてその中にステキなメッセージが書いてありました。私は、脱帽・・・。川嶋先生は、「私、もう78才になったのよ」とおっしゃっていましたが、私が始めてお会いしたのが34年前(先生が44歳、私が20歳)。先生が全然変らないのです! 顔・皺・鋭い表情・姿勢・頭のさえ具合も、何より記憶力が衰えないのです! 私が知る限り忙しさの度合いも、いつも「忙しいのよ。睡眠時間をとれないのよ」といい続けています。どうして後期高齢者になっている年齢なのに(年齢相応の衰えもなく)若々しくバリバリできるのだろうか・・・。「先生、おばけみたいですね、変らなくって」と冗談でいったら、「何いっているのよ」と一笑。依頼への返事の早さといい、脱帽・・・。

私にとっての川嶋語録
 私にとって川嶋先生は、ずっと刺激的な方です。人生の折々に川嶋語録が私に影響を与えてきました。
 たとえば、3人の子どもに接する時間がなくて悩んでいる私に、「子育ては量ではなく、質よ。頭と心を使って“質”を考えて」。超多忙でめげている私に、「忙しいときほどいい仕事ができるものよ。暇になってごらんなさい、結果的にいい仕事なんてできていないから」。子育てと仕事の両立に四苦八苦している私に、「子育ては、1人の子どもに5年、あなただったら合計10年がんばればいいのよ。あと少しよ。あきらめずに両立させなさい。ふと気がつくと、20歳の子どもと居酒屋にいけるようになっているから」本当にその通りなのです。また、「看護師の仕事と家庭を持つことの両立をさせることは、人生を2倍楽しめるわよ」。
 そのほかにもたくさんありますが、川嶋先生がおっしゃると“そうか”と自分の中にすっとその言葉が入ってくるのです。そうやって励ましていただいて仕事を続ける(日常業務だけではなく、創造的なライフワーク)ことができているのだなあとつくづく思うのです。

知らず知らずに自分の価値観に
 若い頃からの母との会話。
私「忙しくてたいへんなの。手伝いにきて!」
母「いつもいつも、忙しいっていっているわね。じゃあ、1週間だけ泊まりにいくわ」
私「本当にそうだね。私って家庭を顧みず親の支援を受けながら仕事ばっかりしているね。やっぱり少しは仕事を減らしたほうがいいかしらね」
母「いいや。仕事を頼まれるうちが華・花だよ。できることなら何でも寝なくても受けて頑張ればいいよ。忙しいということはありがたいことだよ」
“そうか、忙しいということはいいことなんだ”“来た依頼はできる限り断らない”そんなことを知らず知らずに自分の中で大事にしている自分に気がつきます。

自分の価値観とか自分で考えたことなどと思っていることが、実は知らず知らずに誰かの言葉を自分の言葉にしていたり、無意識に影響を受けていることがあるのだと思います。

久々に川嶋先生にお会いして、その姿を見てそんなことを感じました。