東日本大震災 その15 県立病院の中に民間の事業所を 5月26日

 4月上旬から被災地訪問をさせていただき、この間8回ほど伺った。被災地でこれからどんな取り組みをするか、全国組織(全国訪問看護事業協会)としてそれをどう応援するかに相談・検討しているところ。
その中で、これまでなかなか行く機会が少なかった三陸に何度か伺った。花巻や盛岡などの東北本線沿いの町から宮古・釜石・陸前高田などの三陸まではおおむね2時間かかるという。○○山脈をぬうように越えていく。「ワアー」と思わず感嘆の声が上がるきれいな海岸線。大地震ということで私にとっては三陸と“縁”ができたように思う。6月に入ってからもまた三陸に伺うことになった。

県立病院の中に民間の訪問看護ステーションを開設
 4月の訪問のときに、「さあ、次の訪問看護ステーションに行きましょう。次は県立宮古病院の中にあるステーションです」という説明を受けた。高台にある病院の建物は津波の被害は受けなかった。中に入ったら売店の隣に『訪問看護ステーションメデイケア』という明るくかわいい看板があった。
 私はそれを見て、首を傾げた。「ええっ、このステーションは県立なの? 民間なの?」 なんと、このステーションの設置母体が株式会社なのである。私は、てっきり県立病院が訪問看護ステーションを開設したのだと思い込んでいた。この地域は民間病院もあるが、大きくない県立病院がこの地域の医療を担っていると聞いていたことも関係しているが、まさか県立病院の中に株式会社の訪問看護ステーションが事務所をもっているということを想像もしていなかったからだ。

テレビ取材も積極的に受けて、放映
 事務所に入ったら所長さんが歓待してくださり、いろいろ説明をしてくださった。素敵な所長さん兼会社の社長さんはガルシア小織さん。(私はいつも思うんだが、訪問看護師さんたちは美人! 素敵! 本当に)
「自分で会社を立ち上げたんですか?」
「そうなんです。盛岡で訪問看護をしていて、理由があって故郷の宮古に戻ってきたんです。それで自分なりの訪問看護を展開したいと思って、2009年に夫といっしょに会社を立ち上げたんです」
「どうして県立病院の中に作ったんですか? よくOKしていただけましたね。全国的に見ても公立病院の中に民間のステーションの事務所をもっているところは少ないと思いますよ」
「そうですか? 訪問看護は病院と連携することがとても重要だし、売店の隣だから、病院の職員も住民や患者さんにも目立つし、身近で利用しやすいのではないかと考えました。この病院は、県とは違う半ば公的な団体が所有していて、売店と同じように民間企業がテナントとして賃貸契約できるんです」
「そうなんですか。とてもいいアイデアだと思います。全国の皆さんに伝えますね」
「ええ、どうぞ。先日フジテレビの取材があり、全国放映されたんです」
「そうですか。すみません、見なかったなあ。どういう内容でしたか」
「大震災で在宅にいる利用者に訪問看護で支援しているようすです。少しでも訪問看護を広めるためにできることは頑張ろうと思って受けました」
「そうですか。その通りですね。頑張っている内容を国民のみなさんに伝えることが重要ですよね」

大震災の被災状況は?
「事務所は、津波の被害はなかったようですが、全体的には?」
「利用者さんは、数名減りました。津波の被害などです。地震後、ガソリンがなく訪問いけなかったのですが、徒歩も含めて3日目からは訪問を開始しました」

「失礼かもしれませんが、お名前の『ガルシア小織』さんというのは?」
「私は、岩手生まれの日本人です。夫が外国人なんです。いっしょに私の故郷でがんばってくれています」

            5月26日記