「わ」と「な」
「わ」と「な」 2014年12月5日分
週末は東京を離れて地方に講演に行くことが多いが、駅や空港についてタクシーに乗った時に、「ああ、違うところに来た・・・」と思うことがよくある。
先日、雪の青森空港に着いた時もそうだった。タクシーの運転手さんがにこにこと話しかけてくださった。「寒いね。雪がこんなにたくさん積もって。いつもの年より早いんだよ。お客さん、どこから来たの。へえ、東京からだったら寒いでしょ」ざっと、こんなことをいってくださったようなのだが、とにかくなまる。私も東北出身。おおまかなことはわかるが、山形弁(最上弁かな?)とはずいぶん違う。
「青森にきた! っていうきがしますね、運転手さんの言葉で」
「これでも標準語をしゃべっているつもりなんですがね。なまっていますかね・・・」
「とっても、いいですよ。続けてください」
「そうですか、それはうれしい。お客さん、普通のサラリーマンではないですね。僕の見立てでは、学校か大学の先生かな」
「ヘーイ、そんなふうに見えますか? ブー、はずれです」
「じゃあ、何かな???」
等という会話で、楽しい時間を過ごすんです。
津軽弁
「ところで、運転手さんのなまりは、何弁なんですか」
「津軽弁ですよ」
「そうですか。アジがあっていいですね」
「ここらは、とにかく少ない言葉で最大限の表現をするんですよ」
「たとえば?」
「わとなもんぐべさ」
「???」
「ははは。『わ』は私・自分、『な』はあなたということ。『んぐ』は『行く』ということで、『べ・さ』がつくと『行こうよ』という具合。
「私は山形で同じ東北だけど、ずいぶん違うところがあるね。『わ』と『な』は違うわ。『オレ』『オラ』と『おまえ』かな」
その土地・地域にあった豊かな表現
文字にすると味気ないけど、その単語と単語の間の書けない言葉・「ま」や、「い」と「え」中間の発音など実に豊かである。山形のなまりもそうだが、「家」のことは、「い」と「え」の中間の一語。アルファベットで書けば、「YJE」かな?
「方言を若者があまり使わなくなっている」とか「若者がほとんどしゃべることができなくなっている」などということを聞く。もったいないなあとつくづく思う。その土地その土地にいって方言を聞くたびに思うが、方言が豊かである。