『がん』に頼って生きる
『がん』に頼って生きる 10月15日分
私と同年齢の友人Kさん(女性)が、先日6回目のがんの手術を受けた。20歳代後半に甲状腺がんになり、それ以降子宮がんなど30年間で6ヶ所のがんが出現・治療を続けてきた。今回は再度甲状腺がんで全摘した。
Kさんのこれまでの人生は常にがんといっしょで、ある意味では“いつ死ぬかわからない”“死と隣り合わせ”だったともいえるだろう。
私がKさんに会ったのは、3年前なのでそれ以前の気持ちなどはよく知らないが、Kさんは、がんを自覚しつつ、自分なりの自己実現に突進してきたようだ。会社を立ち上げ、新しい事業を次々と行い成功してきた。今も5億円の借金をして大事業を展開し始めた。
「がんがなくなってしまった・・・」
先日、退院直後に久し振りに会った。首に10数cmの生々しい傷を隠すことなくさらす大らかなKさんである。そのKさんが、こういうのである。
「宮崎さん、私、がんがなくなってしまったんだって・・・。私、どうしていいかわからないのよ・・・」
「どうしたのよ。どうして?」
「あのね、甲状腺を切除して調べてみたら「がん」ではなかったというの。その上、脳の一部にも影がありもしかしたら転移かもしれないといわれて覚悟をしていたんだけれど、今回の検査でその陰もなくなっているんだって。これまで30年間、「がん」とともに生きてきたのにそれがなくなってしまったというのよ。そういわれて私は呆然としてしまって、おどおどしてしまったの。
そんなこといわれたってねー。私、「がん」に頼って生きてきたんだと思う。「がん」がなくなって、拠りどころがなくなったというか、自立できない自分がいるというか・・・。
そしてね、私うそつきになってしまう。今までみんなに「がん」だといってきたんだから・・・。
がんがなくなって喜ぶはずだと思うのに、そうではないんだなあー。もし私だったらどんな気持ちだろう。わかるような気もする。
人間の気持ちって、計り知れないなあとつくづく思った。