『認知症の人の歴史を学びませんか』
『認知症の人の歴史を学びませんか』 12月15日分
訂正です。今年中に出版になると書いたのですが、来年の1月が店頭に並ぶ出版日になるそうです。目次は次のようです。
『認知症の人の歴史を知っていますか』――変わること、変わらないこと、変えられること
宮崎和加子・著
田邊順一・写真
中央法規出版
2000円まえがき
その1 歴史を学ぶ前に
その2 認知症の人の居場所の変遷
その3 40年前のこと
その4 精神病院という場で
その5 身体拘束禁止にたどりつくまで
その6 動きだした特養ホーム
その7 老人保健施設とE型デイサービス
その8 宅老所・グループホームの試み始まる
その9 「呆け老人を抱える家族の会」発足と市民活動
その10 介護福祉士の登場
その11 2つの視点から40年を振り返る
その12 未来に向けて
[対談]認知症にまつわる制度はどうつくられてきたか?
あとがき
付録
「はじめに」「おわりに」からちょっと抜粋
「歴史を知らぬものは、未来を語れない」 この本はこの言葉から出発ました。私はこの言葉をずっと心の奥に持ち続けています。恩師である故・川上武氏(医事評論家)から教わった言葉です。歴史は過去のことではなく、今のことであり、これからのことなのだということです。
認知症の人の支援のあり方は、世界中の大きな課題です。日本の到達点は何か、そしてそれが世界の中でどういう位置にあるのか。私は、決して遅れているわけではなく、未来を示す実践が始まっているのだと思います。
けれども、ここに至るまでの歴史というのは、悲しいものです。認知症になってしまった人の多くは、これまで悲惨ともいえる姿で生き、そして亡くなっていかれました。
何も悪いことをしたわけではない認知症の人、病気が原因で記憶障害・認知障害の状態になった人が、手足を縛られたり、牢屋のようなところに閉じ込められたり、薬でぼうっとさせられて、そして死に至りました。憲法に保障された人間として誰もがもっている権利を保障されない『無権利状態』に置かれてきたのです。私がこの本をまとめたいと思った最も大きい理由は、「この歴史を忘れてはならない」「この歴史を繰り返してはいけない」ということを伝えるためです。
認知症のことが社会問題となり始めたのは、1970年ころです。それからおおよそ40年を迎えようとしていますが、過去においてどのようなことがあり、何がどんなふうに変わってきたのでしょうか? あるいは誰が変えてきたのでしょうか? 私自身の認識や体験を含めて伝えていくのが、この本の目的です。これから、認知症の人たちにフォーカスを合わせ、約半世紀の歴史を振り返ってみたいと思います。
なお、この本は、専門家だけに向けてではなく、昔のことを知らない若い介護職や学生、一般市民の方たちなどに向けて書き進めました。そのため、なるべく専門用語を用いず、わかりやすく説明したつもりです。
認知症をとりまく状況は、確かによい方向に変化してきているとはいえ、まだまだです。認知症の人がどこでも安心していきいきと自分らしく生きられる状況ではけっしてありません。この本が、歴史の歯車を少しでも前に進めることに役立てば筆者として望外の喜びです。
我ながら、この本はとてもいい本だと思います。関係者だけでなく、一般市民のみなさんも誰が読んでもいい本だと思います。どうぞご一読を!!