たいがい たいがい
たいがい たいがい 2010年9月15日分
岐阜の友人(Aさん)が講演に呼んでくださった。テーマは、『訪問看護、知って、使って ~地域を支える力』ということで、地域の訪問看護師はもちろん、ケアマネジャー、看護学校の教師と学生、医師、介護職、それに地域住民の方の参加もあった。眠くなりがちな午後の講演なのに、食い入るような視線を感じた講演会だった。
訪問看護ステーションが中心となって
友人は、「プロは一生涯勉強しなければならない」「年齢に関係ない。自分が勉強しなければ」と、40歳代になってから大学院に入学し学んだ。そして、卒業後、有限会社を立ち上げ、訪問看護ステーションを中心にしながら、認知症グループホームと認知症対応デイサービスを立ち上げた。(諸事情から最初に立ち上げたのは、認知症グループホームだが)
そして現在建築中なのが、小規模多機能居宅介護のための家である。「ぜひ、見学したい」と申し出て、見せていただいた。
野菜畑の中の3軒の家
急遽うかがった場所は、小高い丘のようなところの上に広がる素敵な空間だった。「ここは、もともと桑の木畑。介護が必要になっても、がんになっても家にいながら昼間預かったり、時々お泊りもできるようなものを地域の中に作りたいと考えて地域住民の方と相談しているときに、「この土地を使っていいよ」と申し出てくださった100歳の方がいたんです。それで実現したんです」という。
地元の木を使って作ったぬくもりのある家。野菜畑(入居している高齢者が自分たちで作って食している)の中の3軒家(グループホーム・デイ・そして建築中の小規模多機能)。東京では夢のような土地の広さとゆったり感(空間)。
すごい地域住民の力
中に入らせていただいたら、「お待ちしていました」と出迎えの方が3人いらした。職員も入居者でもなさそう。突然訪問したのに???
「講演、すばらしかったですよ。素人の私でもよくわかった。涙がこぼれてきたよ」と。
「あら、○○さん、どうして先生が来ると分かったんですか」
「それは、わけない。なんでも知っているよ、ここのことなら」
「ちょうどよかった。いろいろお話してください」
たぶん70歳代だろう近隣に住む住民の方々が大笑いしながらたくさんお話してくださった。そのお話を要約すると、Aさんの“人”と“力”を見極めた。そして惚れた。この地域でその力を発揮してほしいと賭けた。お金がないというから、地域住民から借りることにして、私たちがさまざまに声をかけて、数千万円集めたのでこれができた。誰がどのくらいお金を持っているか知っているからね。いい人のところには、いい人が集まるもんだ。職員がどの人をみてもみんないい人ばかり。うれしいじゃないですか、みんなで作っているんだから。この地域のみんなのためなんだから。
話は弾んで、
「今度高齢者住宅のようなものを作るかどうか考えている」
「それならば、私がフィンランドで見てきた本物の『共同住宅』はどうですか?」
「それは、どういうものなんですか」
「人と人がいっしょに暮らすというのは、そう簡単ではない。フィンランドでの『共助』『自主』『主体的』『違うことが当たり前が前提でより良く生きあうとは』はすごく参考になると思いますよ」
「それでは、みんなでフィンランドにいこうよ。いつまで生きられるか分からないんだから、すぐに行こう」
要は、やるかやらないか
100歳の入居者さんが、戦争でマーシャル諸島にいっていたと。死ぬ前にもう一度行ってみたいといっているという話がでたら、「じゃあ、途中で死んでもいいと本人がいっているんだったら、すぐに実行しようよ。飛行機はどこからでているんだかね」
何でもすぐ実行! これがすごい。すごいパワーの住民力!
ずっと話を聞いていた若い訪問看護師は、「すごい力! できるかできないかではなく、やるかやらないかなんですね・・・」と。
たいがい、たいがい
方言はいいもの。岐阜のその地の方言で話してくださるのが、何と心地いいか。言葉の端々に、「どえんけ」「たいがい たいがい」「まめなかいな」などとという。
「まめなかいな」・・・元気ですごしているかね
「たいがい たいがい」・・・おおまかに、だいたい
「どえんけ」・・・いいかげん
そうなんですよね。人が生きるってことは、そんなに計算通り、予測どおり、基準どおりにはいかないもの。だからおもしろいとも。
『いいかげんに』『ずるずるに』『たいがい たいがい』『どえんけ』が大事なキーワードかも。
おおらかな笑いのパワフルな3人衆に出会って幸せなひと時でした。