はじめてホームステイを受け入れて

はじめてホームステイを受け入れて      1月15日分

 EPAでインドネシアから来日している看護師・介護福祉士候補者の国家試験対策の合宿講習会を実施して今年で3年目となります。主催者は『ガルーダ・サポーターズ』。
 候補者の経済的負担を軽減するということと日本人家庭で過ごす(国際交流)ことを目的にホームステイを実施してきました。私は、事務局長として段取りはたっぷりとやってきましたが、これまでは諸事情があり我が家にホームステイをすることはできませんでした。
 しかし、昨年末はそれを行うことができました。我が家にホームステイしてくれたのは、インドネシアから来日している男性の看護師候補者2名でした。2泊で、夕食は我が家の家族とガルーダ・サポーターズ役員の方とみんなで過ごしました。もちろん、私の手料理(私は料理が大好きでよくホームパーテイを企画するのです)で、この日のメニューは、キムチ鍋と大盛りサラダと煮物と・・・・とたくさんの料理が並びました。アルコールを飲まない彼らを気にせず、私たちはいろんな種類のアルコールを楽しみながら時間を過ごしました。
 その2泊3日の中で感じたことをいくつか書きます。

ゴミ置き場にビックリ!
 合宿講習会の交流会でのゴミをどうしようかと考えましたが、それほどの量でもないし、無料で貸していただいてる介護学校に申し訳ないと、自宅に持ち帰りました。自動車で我が家に着いて、彼らが「手伝います」といってくれるので、「ありがとう。じゃー、このゴミをあそこに運んでください」といって、手伝っていただきました。
 彼らが、「どうして、ゴミ置き場がこんなにきれいなのですか。たくさん分かれていてどこにおいていいかわからない。インドネシアでは考えられない・・・。今住んでいる寮でもあまりよくわからない・・・」といい、「日本はどうしてどこにいってもきれいなんですか?」と。
 私は、「そうか・・・・」

腰軽く手伝ってくれる
夕食の準備の時、「宮崎さん、何か手伝います。何をしましょうか?」と腰軽く動いてくれることはすばらしい! 座って接待を受けるばかりの人生は何だか不平等だし、居心地が悪いようです。その姿勢はすごかったです。自立しているし・・・。お風呂にしても、タオルも使っていいよというのに、きちんと持参して・・・。

趣味で集めた私のワイングラスが・・・
 食事後の洗い物も自ら台所に立ってやってくれる! すばらしいんです。でも・・・。
洗い終わった食器を入れているカゴの中を見たら、皿とどんぶりと私が趣味で集めているデリケートなワイングラスが混在している・・・・。「ちょっと待って! これはね、われやすいからね、置く場所はね・・・・。ワイングラスが割れちゃうからね・・・」
 生活習慣というのは、何だかたいへんなものです。一つ一つ覚えていけばどうってことないことです。
 
『僕は、何もないんです。だから・・・・』 
 この2泊3日の中で一番私に響いたのは、一人の彼が言った言葉でした。
 自己紹介をすることになって、全員かなり詳しい込み入った内容も含めた自己紹介をしたんです。その時に、看護師候補者の一人がこういったのです。
『僕は、名前は○○、年齢は○○。あとは何にもないんです。インドネシアにいるときには、看護師の資格もあったし、家族も近くにいた。友人もたくさんいました。でも、日本に来て、僕は何にもなくなりました。看護師の資格もない。恋人もいない、友人もなかなかできない。家族も遠い。今の僕は、何にもない人間なんです。ですから、いうことがないんです』と。
 私は、それを聞いて、心がフリージングし言葉に詰まりました。「そんなふうに思っているんだ・・・」「いろいろあるじゃない・・・」そんな言葉はなんにもならないんです。
 
とにかく、国家試験に受かってから
 私は、いい加減な人間だから、酔った席で「日本人の彼女を見つけ、結婚したらどう? そうすれば、在留資格ができて、ゆっくりと立ち向かえるよ。そういう彼女はいないの?」なんて聞いてしまいました。そしたら、彼は、こういったんです。
「宮崎さん、そんなことはだめです。イスラム教の教えは、自分が認めた女性を心から愛していくことです。結婚前のエッチだってだめです。イスラム教は一夫多妻でもよいといわれているけれど、実際にはそういう人は0.5%もいないと思う。清い心が大事。だから、僕は、とにかく国家試験に合格して、まず『看護師』という資格を得たいんです。それから、彼女も友人も・・・・。だから、合格できるように必死でがんばっているんです!!」と。

 人間観・男女観・宗教観の違いなどをたっぷりとおしゃべりした一時でした。私は、彼がいった「今の自分には、何もない・・・」ということが、ずっと心に響いているんです。みなさん、そういう気持ち・境遇にあったことがあるでしょうか。