やりなおし介護保険
『やりなおし介護保険――制度を生まれ変わらせる20の方法』その1
2013年9月15日分
上記のタイトルの本が出版されます。10月1日筑摩書房から発行・発売。
著者は、増子忠道先生。長年の私の師でもあります。この本を作るのに、編集協力という形で私がかかわらせていただきました。とてもおもしろい本だと思います。介護関係者も一般市民の皆さんも行政の方もぜひ一読をお勧めします。みんな自分の問題です。
以下、この本のあとがきに書かせていただいた文章の一部を転記します。
あとがきより
本書は増子忠道先生が「介護保険をよくするために」問題点を洗い出し、その改善策を具体的に提案するものです。私はかねてより、増子先生の本書の執筆を強く勧めてきました。その理由は三つです。
“おもしろい”発想
まずなによりも、増子先生の発想や提案がとてもおもしろいからです。「おもしろい」にはいろいろな意味合いがありますが、どんなに有益な提案でも、聞いた人が「よくわからない」「よさそうだけど、難しい」と反応するようなものでは広く理解されることはないでしょう。その点、増子先生の考え方には、どの立場の人であっても「そうだよね」「わかりやすいね」「一考の余地があるね」「こういう方法に変われば今よりよくなるかもしれない」と、身を乗り出すような魅力があるのです。・・・中略・・・
介護保険をよくしたい
本を書くことを勧めた理由のふたつ目は、長年高齢者医療や在宅ケア、訪問看護に携わってきたものとして、介護保険をもっとよくしたいと思う気持ちが強いからです。
2025年を見据えて、日本の高齢社会対策はこれからが本番です。特に社会保障分野の介護保険については批判も多く、実に多くの課題を抱えているのが現状です。
そういう中で、今必要なことは、当事者も含めてどの立場の人も「これからどうするのか」を本気で考えることです。一見突拍子もないように思えるアイデアもどんどん出してみて、その上で激論し、「要介護状態になっても生き生きと自分らしく生活し生きられる」社会に一歩でも近づくよう、制度や仕組みを構築していくことが大切だと思います。・・・中略・・・
人間味あふれる現場の医師からのメッセージ
三つ目の理由は、私が増子先生に“惹かれている”からです。増子先生と出会ったのは、今から三十数年前、私が看護学生の時です。当時の私は、大学病院での実習や実践に未来を見出せなくて、地域医療・看護、訪問看護の分野に目を向け取り組みたいと考えるようになっていました。そんな時、東京の下町で草の根の活動をしている増子先生たちの医療集団に出会い、いっしょに活動をさせていただきました。
私が一番惹かれたのは、増子先生の、患者さんや利用者の方々に対する見方・接し方です。往診同行すると、家中ゴミがあふれ、家族から見放され、アルコール漬けになっている床ずれだらけの“寝たきり老人”が隠れるように暮らしていました。そういう方に対して、私たち医療従事者は何をするのか……。何ができるのか……。関係者のカンファレンスでは、ついつい自己責任論が出て、「仕方ない」「自業自得」などという意見も聞かれる中、増子先生はこう言うのです。・・・・・中略・・・
そういう人間味あふれる現場のひとりの医師からのメッセージを、社会に届けようと思ったのです。
本書の出版については、2011年秋から検討をはじめました。実現までに2年かかったことになります。試行錯誤しながらの本作りでした。
増子先生の20の方法・方策については、私個人としては少し異なる意見を持っている部分もありますが、とにかく増子先生の案を、増子先生の責任において、世の中に提示することを一番大事にし、応援してきました。
私の役割は、「早く原稿を書いてください」「早く出版しましょう」と急き立てることと、多くの人に手に取っていただくために、各提案の冒頭にQ&Aを付したことです。まずは素朴な疑問に私が答える形で、先生の提案の核心をコンパクトにまとめてみました。
皆さんの議論にすこしでも役立てば幸いです。