フランス デモ事情
フランス デモ事情 5月5日分
フランスだより その3。フランスの大学院で学んでいる次男からの便り。
皆さん、フランスって、頻繁にデモやストライキがあって、電車が止まるっていうイメージはありませんか? 実は本当にあるのです。それも前日に発表があって市民にストの実施を知らされるのです。ですからもしストがあると、電車が終日運行しなくなったり、運行数が半分になったりということもあります。その他にも、大規模なデモ行進をやり、主要道路が完全に封鎖されるということもあります。
私もモンペリエに住んでいていくつかのデモに参加しました。その時の様子をご紹介します。例えば、2010年のサルコジが提案した「退職年齢を60歳から62歳まで引き上げる法案」に対して、フランス全土で反対デモや集会が行われました。というのも、労働者は早く定年したいし、これから働く若者は自分達の雇用が減ると考えたからです。さらに年金受給資格年齢を引き上げるのも法案に入っていたので本当にフランス全土が揺れていました。
その時は、モンペリエの主要道路と町の中心の広場などを何千という人がプラカードや労働組合の旗などをもってみんなで大声で法案反対を訴えるのです。慣れたもので、その後ろを警察が交通整理をしながら追いかけて来ます。マンションに住んでいるおばあちゃんが、ベランダから鍋を叩いて応援していたのが記憶に残っています。
以上のように、テーマが政治や労働者中心のデモについてもありますが、他にも同性愛者の権利を訴えるデモや、車の代わりに自転車を使ってエコな生活を目指すとかテーマも主張も様々です。ちなみに後者は私も参加したのですが、自転車が200台位で、みんなで鈴を鳴らしながらスローガンを叫ぶんのです。
興味ない住人からしたらただの騒音ですが、なによりも、市民の主張や表現が優先される文化、雰囲気があります。
これはきっと歴史的背景が大きくあると思います。そう、フランス革命です。一言で言うと、1789年、当時の絶対王制と旧体制が崩壊し、国民が民主主義を彼らの手で勝ち取ったというものです。さらに当時の理念の「自由、平等、博愛」は今もフランスの標語になっています。
その歴史が、フランス人の精神であり子どもの時から皆が持っている共通の考え、誇りです。ですから彼らは自分たち国民が、政治や意見を主張するのは当然の権利であり、また責任があり、さらに自分達の手で国を作っていく。そういう考え方が今も引き継がれています。
国民が自分たちで勝ち取った歴史って日本にはないかもしれません。そのことが、日本とフランスの国民の政治への関心度の違いなのかもしれません。