フランスの「開業看護師」

フランスの「開業看護師」       2013年10月15日分

開業看護師
 フランスには、他の欧米(日本にも)にはないシステムの『開業看護師』があるということは聞いていた。日本では3万人しかいない訪問看護師なのに、人口が半分しかいないフランスで開業看護師(主に一人で自宅で開業していると紹介されていた)が7万人もいるというのである。一体どこからの依頼で何をするところなんだろうと、今回の視察旅行では少しでもわかればいいなあと思っていた。
視察の途中で何度かその言葉を耳にしたが、なかなか詳しく聞ける機会がなくて?のままだった。そのことをメインで聞けるだろうと思った「国立在宅看護推進連盟」とでもいうべき団体の視察は相手の都合でキャンセルになってしまい残念に思っていた。

訪問看護事業所も
 フランスで在宅療養の患者・利用者へ看護師が訪問する(訪問看護)は、大きく3つに分かれるようだった。一つは前述の「在宅入院機関」の看護師。ただし、一定の入院期間だけ。二つ目には日本でいう訪問看護ステーション(訪問看護事業所)で訪問看護師集団で、地域で暮らす方々の看護のために訪問する。
 一つの訪問看護事業所を視察したが、そこは、特養ホームのような施設の中にあったが、誇りを持って仕事をしている様子を説明してくれた。(医療保険での訪問看護)

開業看護師の事務所に訪問!
 あきらめかけていた時に、在仏の日本人の通訳の方が、「私がよく利用する開業看護所に行ってみましょうか。誰もいないかもしれませんが、とにかく・・・」と予定外にバスを向けてくれた。夕方5時ごろだったと思う。
 パリのエッフェル塔に近いところの大通りに面したところに間口が1間半か2間程度の小さな事務所がそこだった。看板には次のようなことが書かれてあった。オープンしている時間帯は、朝の1時間と夕方の1時間程度。実施する内容は、主に注射や処置だった。
 通訳の方が、中に入って行って見せてほしいという旨を話してくれて、OKをいただいた。中には、男性の看護師が一人いて説明してくれた。狭い室内(事務空間やトイレも入れてたぶん6畳か8畳くらい)には、処置台が2つ並んでいて薬剤や衛生材料らしきものが置いてあった。「友人と二人で共同して事務所を開いている。昼間は利用者宅訪問している」と。

患者さんが来訪
 そしたらちょうど60代くらいの女性が処方箋を持って来所した。傷の処置らしかった。来所して処置をして帰るまでの時間はおよそ10分。あっという間。もう一人来所。見ていると、診療所の処置室的な役割のようだった。患者さんが出勤前や勤務終了後に立ち寄って処置・注射をしている。

仕組みが大きく違う
 いろいろと話を聞いてわかったことは、診療所の医師の役割が大きく違う。聴診器一本で開業。検査やX線撮影は、それぞれ開業している検査センターやX線撮影センターに処方箋で指示を出すと実施してその結果を報告してくれる。注射や処置が必要なときは、開業看護所向けに処方箋を書き、患者に持たせる仕組みなのだ。これが50年も前から続いている仕組みだという。
 開業看護所は、開業権を譲渡・売買で譲っていくもの。日本での医師の開業の仕組みと似ているようだ。

開業看護師の訪問看護の場面は見ることができなかった
 日本の診療所の処置室のような開業看護所。訪問看護をどのようにやっているのかを視察することはできなかったのでよくはわからない。処置屋さんになっていなければいいが・・・。
 フランスは、医師の権限が強く、医師の指示がかなりの力を持っているようであった。

他の国もことを参考にする場合は、名称とか上辺を見ていってはいけないとつくづく思った。その国の仕組み全体を見たうえで、また患者・利用者側から見て紹介したりモデルにしたりすべきである。
参考にはなったが、今一つ把握・理解できていないように思う。またの機会があればぜひ、もっと深めたいものである。