フランス大統領選挙

フランス大統領選挙           4月28日分

フランスに留学中の次男からの便り、その2です。

フランス大統領選挙が先週日曜の4月22日に実施されました。EU(欧州連合)27加盟国の中心国の1つでもあり、また国際連合の常任理事国の1つでもあるフランスの大統領選挙は世界的に注目されています。今回はこの大統領選挙第一回投票の結果と5月6日に行われる決選投票について、私のフランスでの経験も交えながら紹介したいと思います。

大統領選挙はどのように行われるか
まず共和国大統領選挙の特徴は大きく2つだと思います。

⇒国民による直接選挙である
日本では国民が国会議員を選挙で選び、その国会議員が国の代表・顔である首相を選ぶという方法です。しかし、フランスでは国民が直接国の代表を投票します。また任期は5年で日本のように簡単に首相を辞めたりせず、5年間任期を全うするのが基本なので、国民も自ずと選挙に注目します。また有権者の投票率は約80%と注目されているのがわかります。

⇒投票は基本的に2回行われる。
1回目の選挙で有効投票数の過半数の票が獲得できた候補がいない場合は、上位2候補で決選投票を行います。1回目の投票で得票率50%というのは、多種多様な候補者が出馬するフランスでは難しいラインであり、過去8回行われた第5共和制選挙では1回目のみで当選した大統領はいません。

選挙活動とメディア
フランスの大統領の選挙活動、またメディアの報道の仕方も非常にオープンだと感じました。

キャンペーン活動
投票日までの約1ヶ月がキャンペーン期間で各候補はフランス全土を回りアピールをします。候補者は直接市民に訴えることができ、また市民は候補者を直接見極めることができます。その為、市民には非常に人気があり各地の会場はすぐいっぱいになる。
私が住んでいたモンペリエの街にも、ある候補者が来るというので見に行ったがホールがいっぱいで入ることもできませんでした。

テレビ討論
フランスでは、政党や支持率の高低に関らず、各候補者に基本的に同じだけのアピール時間が与えられます。例えば、平日の夜8時(ゴールデンタイム)から生放送で候補者1人が、ジャーナリストや時には一般市民と色々なテーマで議論する。ここで大切なことは、各候補者に平等に時間が与えられるという事と、有権者がテレビを通して各候補者の人柄や政策を比較することができることです。
しかし、やはり2大候補の右派のUMP(国民運動連合)のサルコジとPS(社会党)のオランドのことをメディアも多く報道していることも事実です。

第一回選挙結果
ここでは候補者を紹介したいと思います。正式に立候補したのは10人ですが、今回は投票前有力視されていた6人をピックアップします。順番は得票率順。

① フランソワ・オランド(PS:社会党):左派28.63%
最有力候補、原発依存率を75%から50%に2025年までに引き下げる方針。富裕層への課税強化を訴える。
② ニコラ・サルコジ(UMP:国民運動連合):右派27.18%
再選を目指す現大統領。原発推進派、新米路線、留学生半減など移民を減らす方針を採っている。付加価値税(日本の消費税のようなもの)を現在の19.6%から21.2%にすると表明。
③ マリーヌ・ル・ペン(FN:国民戦線):極右17.9%
極右、原発推進派。毎年の移民を20万人から1万人に激減させる方針、また脱EU路線。
④ ジャンリュック・メランション(FG:左翼戦線):極左11.1%
選挙活動する以前の支持率は6%程だったが最終的に11%。特に若者に支持されている。
⑤ フランソワ・べイルー(Modem:民主運動):中道9.13%
3度目の大統領選挙。
⑥エヴァ・ジョリ(EELV:緑の党):2.31%
ノルウェー出身、原発廃止を訴える。

フランスでは、極右、極左の支持もかなりあることがわかります。特に極右のル・ペンが数を伸ばしたのが今回の特徴です。フランスには現在人口の8%に当たる約500万人の移民がおり、増え続けている移民については、今回の選挙の主要テーマの1つです。先月南仏トゥールーズでアルジェリア系移民による銃乱射事件で7人が犠牲になった事件も彼女に支持を広げた理由かもしれません。

おわりに
来る5月6日に行われる第二回投票で共和国大統領が決まります。2人の支持率は社会党のオランドが54~56%、現大統領のサルコジが44~46%となっていてオランドの優勢が続いています。争点は沢山ありますが、まず雇用問題をどうするのか。現在288万人いて今も増え続けている失業者をどうするのか。二点目は、EUの財政再建問題である。サルコジとドイツのメルケル首相コンビのEU財政政策を継続するかどうか、また移民を今までどおり受け入れるのか、原発依存を続けるのか、減らすのか。
皆さんも大統領選に注目してみてください。ちなみにもしオランドが選出された場合は17年ぶりに左派の大統領誕生となります。