リスクマネジメントマニュアル
リスクマネジメントマニュアル 6月5日分
5月25日に新しい本が世に出ました。『在宅ケア リスクマネジメントマニュアルー“生活の場”の看護から導き出された!』(日本看護協会出版会、2800円)です。
これは、私と若い訪問看護師4名の5名で執筆したものです。4名とは、次方々です。
・小菅紀子(特定医療法人健和会:北千住訪問看護ステーション所長)
・竹森志穂(特定医療法人健和会:訪問看護ステーションしろかね所長)
・平野智子(特定非営利活動法人:訪問看護ステーションコスモス)
・松井知子(世田谷区社会福祉事業団:訪問看護ステーションけやき所長)
約2年かけて、討論に討論を重ねて皆で作り上げた共同作品です。
これは、私が言うのも変ですが、なかなかいい本だと思います。
思いを、「はじめに」に書きましたので、それを抜粋します。活用していただけるとうれしいです。
「はじめに」の抜粋
「介護保険が始まってから、利用者の苦情が増えた」「この10年で在宅での医療行為を必要とする患者・利用者が増えた」「利用者の自己実現を優先すると危険を覚悟で行わなければならないことがある」病院でのリスクマネジメントと在宅でのリスクマネジメントの考え方はちょっと違うんじゃないかと思う」最近耳にする現場での声です。
あれから10年
「在宅ケアにおけるリスクマネジメントマニュアル」(日本看護協会出版会 2003)を出版してから10年目を迎えました。実際の事故事例を元に、すぐに現場で使えるマニュアルとして世に出て、実に多くの現場の皆さんに活用していただきました。
あれから10年経って、現場を巡る状況がさまざまに変化していて、新たな形でまとめ直すことにしました。具体的には、介護保険スタート(2000年)以降、10年前には想定できなかったような事故や問題が起きていること、またリスクマネジメントについての種々の研究・取り組みによって考え方が整理され、そのことを取り入れて刷新する必要性を感じたのです。
若手訪問看護師たちの共同作品
そこで、思案した結果、若手の訪問看護師とともに“現場にすぐに役立つ内容で”“わかりやすく”“新しい見地を入れ込んで”作ることにしました。この本をまとめることそのものが『勉強』ととらえ、実際に現場で起きていることをもとに、かなりの頻度で会って話し合って(時には泊り込んで合宿で)作り上げるという取り組みです。そういう意味では、この本は『共同作品』です。
今回の特徴は4つ
◆ 事故やヒヤリハットのレベル分けと事故分析の深まり
ヒヤリハットや事故は大小さまざまです。それをわかりやすく利用者側と職員・訪問看護ステーション側の2面からみたレベル分けをしました。また、多様な事故を紹介するとともにその分析についても私たちなりに考察して少しでも現場での分析に役立つようにしました。
◆概念図でわかりやすく整理したこと
「リスク」や「インシデント」「ヒヤリハット」、「マネジメント」について、わかっているようであいまいに使っている用語や概念について、私たちなりに整理して、『概念図』を作りました。まだまだ不十分な点はあるかと思いますが、今のところの到達点です。
◆ 危険予知トレーニング(KYT)を取り入れたこと
危険を感じ取る感性が大事であり、その感性を磨くための「危険予知トレーニング」の在宅版を作りました。
◆ 「生活の場でのリスクマネジメント」の追求
「医療の場」でのリスクマネジメントと「生活の場」でのリスクマネジメントの視点の違いを明らかにして、そして「危険」をある程度覚悟しながら「生活の質」「人生の質」の充実の視点から支援することの重要性について追求しその実験例について書きました。
「安全」のみを優先した日常生活支援ではない在宅ケアでの新たなリスクマネジメントのあり方の提示です。
幅広い分野で活用を
この本の主な対象者は、訪問看護師や訪問看護ステーションです。しかし、在宅ケアを担当する訪問介護事業所やデイサービス、またケアマネージャーなどにも活用していただけるように配慮して作ってきました。さらに「生活の場」としての特別養護老人ホームや老人保健施設でもこのような考え方を活用していただければ幸いです。
若手ナースの力をうれしく思っています。世代交代ですね・・・。
日本看護協会出版会のホームページにも載っています。