台湾の「介護保険制度」 

台湾の「介護保険制度」      6月25日分
 
 つい先日、台湾を訪問しました。台北で医療福祉機器展がありそのイベントとして日本の訪問看護の現状と課題・展望についての講演依頼が、全国訪問看護事業協会にあり、常務理事の上野桂子さんと私で担当させていただいたのです。(台湾貿易センターから)歴史・制度・現状・課題など概括的な内容と、写真をたくさん使ってその実際について二人で分担して話をさせていただいた。
 これを引き受けるのに、依頼者にお願いしたのは、台湾の訪問看護や介護保障システムなどを見学・視察したい、それもできれば現場で同行訪問したいということでした。

介護保険制度を作るかどうかの検討をしている最中
 台湾は、現在の高齢化率(全人口に対する65歳以上の人口の割合)は、約10%(日本は約22%)だが、これから世界に類をみない速さで高齢化が進む。一人の女性が生涯で子どもを生むのは、1.0と世界で最下位。つまり人口がどんどん減り、高齢者があふれてくる。その変化が急激なので緊急課題でさまざまな準備をしているようだ。台湾は、日本の政策・対策をよく研究して新たな制度を作っているとのこと。日本でいう厚生労働省の介護保険担当の部署の方から説明を伺ってきた。日本の広島大学で学んだという担当官(社会福祉士)は、流暢な日本語で説明してくれた。
 介護保険のサービスとして検討されているのは、訪問介護・デイサービス・福祉機器貸与・施設入所など8つのサービスである。訪問看護と訪問リハビリも介護保険のメニューには入っていっしょに検討されているが、財源は医療保険の方にするのかどうかはまだあいまいだという。
 財源は税金が入るのかなどいろいろ質問したが、まだはっきりしていない部分が多くまだ時間がかかるような印象だった。
 特筆すれば、現在、介護サービスとして在宅に滞在する形でフィリピンやインドネシア人が数ヶ月単位で交代で入っている。それにかなり依存している。

訪問看護も実施されてはいるが・・・
 実は、私は台湾を訪問するのは、2回目である。1997年に台湾の南の都市の高雄に1週間滞在したことがある。その時に病院・長期療養施設・訪問看護などたっぷりと視察させていただいたことがあるのです。(高雄の大学の看護学部で講演させていただいた)その時に、驚いたのは、訪問看護という看護師が患者・利用者宅を訪問して看護する制度は始まっていたのだが、その対象者が、医療処置が必要な人だけだった。そのせいか、口から食べられるのに経管栄養のチューブが挿入している人がいて、「チューブが必要なのですか」と聞いたら「これがついていないと保険対象にならないから自費扱いになってしまうんです。だから・・・」といっていた。
 そのことが、13年後の2010年にどうなっているのか、とても興味深かった。
衛生院という日本でいえば厚生労働省看護課にあたるのだろうか、その部署の方がさまざまに説明してくださった。
 日本の訪問看護ステーションのような看護師の事務所は480か所ほどあるという。(人口が日本の5分の1程度)しかし、看護師は専任でなければならない規定はなく、外来や病棟と兼務でもいいことや、自宅を事務所にしてもいいこと、訪問頻度は原則週2回であることなど基準があいまいに見えたり、まだまだ発展途上であるようにみえた。対象者が医療処置などが必要な人となっていることについては変更はされていないようだった。日本は看護の2大業務の①診療の補助業務、②療養上の世話の②をとても大事に誇りを持って実施しているが、台湾も含め他の国では②についてはきちんと看護師の業務となっているところは多いとはいえない。
ただ、今回の訪問では現場を視察できなかったので詳しいことはわからない。またの機会にぜひ交流したいものである。

わかったこと◆ アジアの国もあっというまに高齢社会
◆ どの国も介護問題・社会保障が大きな社会問題
◆ 外国人介護職・看護職は世界規模での動き
◆ 台湾も模索しながら作り上げようとしていること
◆ 台湾は何だか生き生きとしたエネルギーを感じた
◆ 日本にない対象者群・・・“55歳以上の原住民”
◆ しかし、今後の台湾についてとても心配になった
◆ などなど

台湾を訪問して、私が新たに強く認識したのは、原住民(世界的には「先住民」というようだが、台湾では「原住民」という言い方をしていた)についてだった。いまだ多数の民族が昔からの生活を大事にしながら暮らしている。その歴史・ルーツなど私にとってはとっても興味深かった。刺激的だった!
なんせ、介護保険の対象と考えられている中に、「55歳以上の原住民」と別記されていたことにビックリ! 「どうしてですか」「平均寿命が短いんです」「どうして?」「よくわかりませんが、アルコールも関係しているかな??」
 フィリピンやインドネシアなど東南アジアに最近は訪問する機会が多いが、台湾との共通性と相違点がわたしなりに把握でき、何よりも『緯度』と『歴史』を再度大きく認識した貴重な時間でした。