報酬改定

報酬改定           4月5日分

 この4月に、6年に一度の介護保険・医療保険(診療報酬)の同時改定があった。医療保険は2年に一度、介護保険は3年に一度で、両方に関係する事業・サービスはそれほど多くはないか、私がずっとかかわらせていただいている『訪問看護』は、その代表的な一つである。

この間の経過
 日本で訪問看護の試みの実践が始まったのは、1970年代半ば。かれこれ30数年になる。それから制度化されるまでに約10年かかり、1983年の老人保健法施行時に医療保険の中と、老人福祉の中の2つに制度化された。その後、『訪問看護ステーション』という看護師が管理者となって、地域の中の在宅医療・ケアの中軸となる訪問看護師集団の拠点が制度化され、スタートしたのが1992年で、ちょうど20年前。その訪問看護ステーションは、医療保険の中に位置づけられた。私が所属してきた医療法人健和会では、東京の第一号の『北千住訪問看護ステーション』を開設し、私はその責任者として、またその後は様々な地域に多数開設する動きをずっとしてきた。
 2000年に介護保険がスタートして、この分野が新たな局面に差し掛かった。医療保険と介護保険にまたがり、利用者の病名や状態によって適応する保険が変わってしまう。微妙に違う両保険の狭間で、また報酬改定のたびに改善され変化することで、制度はすごく複雑になり、実施している訪問看護師からみても、ケアマネジャー、医師、特に:国民・利用者から見てわかりにくい状況となっているのが実態だ。
 それで、この“2012年同時改定”という6年に一度しかないチャンスに様々な大胆な改善・変化をしようという取り組みをしようと様々な人たち・団体が動いてきた。

医療保険に一元化という意見も
 かなり大胆な現場からの提案としては、訪問看護やリハビリ関連を介護保険からはずして全部医療保険に位置づけるという内容のものがあり、その実現の可能性についても意見収集し随分議論してきた。全国訪問看護事業協会で全国の訪問看護ステーションの全数意向調査を実施したところ、その意見に賛成が約60%だった。
 しかし、多様な意見があり、また制度上なかなかそう簡単にことは進まず、今回の改定になった。

今回の改定の特徴
 今回の同時改定は全体的には、事業者・サービス提供者(医療機関・介護事業者)にとってはかなり厳しい内容だ。事業の継続が困難で事業閉鎖せざるを得ないという声も聞こえている。
 その中で、訪問看護関連は報酬がかなりアップし諸条件が改善された。“訪問看護の1人勝ち”などという方もいる。全体的な状況を見れば何ともいえないが、訪問看護を根付かせ、国民にもっともっと近い距離・内容でのサービス提供ができるようにと、小さい力だが頑張ってきた私としては、“安堵”というのが正直な気持ちだ。腑に落ちない、筋が通らない制度の不備を今回は少しはすっきりとしたと思う。何より、医療保険と介護保険の齟齬(違い)を極力少なくしようという動きが重んじられた。
 訪問看護業界にとっては、かなり思い切った改善となり、そのこと事体が『国民の期待』だと受け止めている。医療的ニーズが多い要介護者が増えている現状では、訪問看護師など生活支援に重きを置いた看護師ががんばらなければならないのだろうと、身を引き締めている。

被災地で改定関連研修会を実施
 訪問看護関連の両保険の改定項目・内容が多い。それぞれ10数項目ある(合計約30項目)。そこで、全国訪問看護事業協会では、3月に東京と大阪でそのための研修会を実施したが、申し込みが殺到して、それぞれ500名以上の会場を準備したが収容しきれず、急遽3月31日に追加で東京で実施した。参加者が「これを聞かないと仕事ができない」といっていた。
 それでふと考えた。被災地の人たちは参加できたんだろうかと。そこで、必要ならば被災県で特別に研修会を実施することを思いつき、各県協議会の役員の方々に相談したところ、実施することになった。ある県は、県庁所在地までに行くのがたいへんなので沿岸部の被災地に来てくれというところもあり、「集まる人数は何人でも喜んで伺います」と計画した。かなり細かい内容で理解するのに難しい内容があるので、私たちを活用していただければありがたい。
“より正確に、よりわかりやすく”をモットーに日々勉強し、厚生労働省にも問い合わせて全国からの相談に応じている。そのことを被災地の皆さんに活用していただけるとうれしい。できることは、何でもしようという支援の一つである。