東日本大震災 その14 遺体を守り・・・
東日本大震災 その14 遺体を守り・・・ 5月18日
ある訪問看護師さんから聞いた話。
あるALS(アミトロ・神経難病)の女性の患者さんの訪問予定が3月11日(金)15時だった。そのつもりで車で出かけた。ところが、14時46分に大きな地震がきた。そのお宅は海から離れているので津波が来ることはないと判断したが、訪問するかどうか迷った。他の人の被害のことも心配になったし、職員の安否も気になったからだ。それで、そのご家族に電話をしてみた。まだ電話が通じた。
「地震、大きかったですね。大丈夫でしたか?」
「本当に大変な地震だったね。海辺のほうは津波が来るようだよ。自分も妻も命に別状はないけれど、家のガラスが割れて飛んできて妻の身体に刺さりそうなんだよ。看護師さん、きょうは訪問しなくていいよ。家の中がメチャクチャだし、他の人のこともあるだろう。ウチは大丈夫だから今度でいいよ」
「そうですか。ではきょうの訪問は中止にしますね。他の海辺の方の人のところに行ってみますね」
ところが・・・
しかし、その後停電になり、大きな余震が続き不安になって、途中で引き返しその方のお宅を訪問した。そしたら・・・。介護をしている旦那さんが、ベッドの上に横たわっている奥さんの上に覆いかぶさって自分の身体でガラスをよけていた。ところが、よく見てみると奥様は息をしていないではありませんか! 停電になり、そういうときのために準備しておいた緊急用発電機が動いて人工呼吸器も動いてはいたが、器具がうまく接続されていなくて、奥さんの呼吸は止まっていたのだ。
「旦那さん、奥さん、息をしていないですよ」
「そんなことないよ。器械は動いているし、息をしているよ。あったかいし・・・」
「よ~く、見てください。ほら」
「ええっ・・・」
ご主人は、余震続きで降ってくるガラスと停電と、何が何だかわからない時間を過ごしていたのではないだろうか。妻をガラスの破片から守ろうと必死で・・・。
5月18日記