東日本大震災 その3 救助か避難か
東日本大震災 その3 救助か避難か 4月25日
福島県の相馬・南相馬の訪問看護ステーションに伺うときに、二人の訪問看護師さん(所長さん。福島市と伊達市)が同行してくだいました。とても素敵な方々です。(いつもどこに行っても思うのですが、訪問看護師さんはステキ!です) 車で移動中の話。
「今日は、自分のところのステーションで難しい話し合いをしているのよ」
「どんな内容?」
「あのね、余震が多いでしょ。利用者さんのお宅に訪問しているときに地震や津波がきたら、利用者さんを救助することが優先なのか、自分の命を守るために自分が非難することを優先するのか、どうしていいかわからないというのです。業務命令で『こうしろ』と決めてくれないかという話が出てきているんです」
「それはなかなか難しいね」
「そうなんですよ。結論が出ない話かもしれないけれど、話し合っておくことは重要だと思って話し合っているんです」
利用者・家族・ケアマネ・ヘルパー・訪問看護師が、津波に・・・
そんな話をしていた矢先に、訪問先の訪問看護ステーションでこんな話を聞きました。
その日の午後、海辺に住む要介護5の利用者さんのケアプランの見直しのために、ケアマネとヘルパーと訪問看護師がその利用者さんのご自宅に訪問して調整をしたとのこと。終了し、それぞれが帰ろうとして家を出た途端に地震がきた。3人は、津波が来ることを予測して、急いでその利用者さんの家に戻り、救助して避難を手伝おうとしていた。あっという間に時間がたち、間に合わず、津波が家族の人も含めて5人をのみ込んでしまったという。
その訪問看護師さんの話では、その後のことをよく覚えていないが、「こんなことで死んでたまるか!」と、無我夢中でその辺の木などにつかまり踏ん張ったという。数日後に発見され、何とか命が助かったが全身傷だらけ・・・。あとでわかったが、他の4名は流されてしまって命を落とした。
その4人も「死んでたまるか」と必死でつかまって助かろうとしたんだと思う。たまたまというか、運というか、1人だけ命が助かったこの訪問看護師の気持ちを思うとやるせない。世の中なんと無情なのだろうか・・・。
訪問した日は、その訪問看護師さんは休暇で同僚の方から聞いた話です。
契約書の中に明記
その後、岩手を訪問したときに、この「利用者の救助」か「職員の避難」かという話題になったときに、こんな話を聞いた。地震や津波が来るかもしれないことを想定して、契約書の中にそういう場合についての約束事を決めてあるそうである。なるほどと思った。
個人の責任になり生涯心に重荷にならないように、ある程度の決め事を作っておいたほうがいいのかもしれないと思った。
つづきは、また。間をおかないで書いていきます。 4月25日記