東日本大震災 その8 ずっと事務所に寝泊り

東日本大震災 その8 ずっと事務所に寝泊り  4月30日

 全国訪問看護事業協会の活動の一環として、被災地を回ってきたことを、私なりに感じたことも含めて全国のみなさんにお伝えしなければと思い、書き綴っています。あまりにも貴重な話しが多かったのです。個人名がでている場合は、ご本人の許可をいただいています。

花見山の桜をおみやげに

 福島の相馬・南相馬に向かった日は、私は朝4時出発でした。(運転をしてくださったボランテイアの方は、朝方3時半出発。帰宅したのは、21時間後の翌日0時半)車は2台。1台は小型トラック、もう一台は大き目のワンボックスカー。小型トラックの運転をお願いしたのは、知人のボランテイア。『緊急車両』の認定を受けたワンボックスカーと運転手2人をボランテイアで派遣してくれたのは、友人・・・大起エンゼルヘルプの和田行男氏。和田氏たちは、ガソリンがない直後から全国からの支援物資を新潟でガソリンをつめ、被災した郡山の福祉施設に何度も届けている)で、「車と人を応援するよ」とかってでてくれた)。
 福島西インターで待ち合わせ、合計6人で出発。直後に、同行した福島の訪問看護師さんが、「今、ちょうど花見山の桜が見事なんですよ。個人の山なんだけど、山全体にさまざまな桜があって数年前から全国的に有名になり観光客がたくさん来るんですよ。でも今年は・・・。ほら、遠くに見えるでしょ」といった。私は、直感的に、「そこに寄っていこう」といって車を向けた。ボランテイアの方もいる。ハードな一日の前に、心をほぐそうと思ったのだ。
 それはそれは素晴らしい桜。山全体がなんともいえない桜色。黄色のれんぎょうも見事! とそのとき、私は、「これをこれから行く相馬・南相馬の被災した方々にも見ていただきたいなあ」と思い、まだ店を開いていないご近所の路上の臨時花屋・八百屋のおばさんにお願いして、山から切った桜の枝の束をそこにあるだけ(10数束)全部と獲れたてのきゅうり一箱を買い求めた。「今から相馬の方の被災した方々に持っていくのよ」と一言行ったら、「そう、自分たちも行って何かしたいんだけどなかなかいけないので、じゃあ、おおまけするよ。それからこれを持っていって!」と別の鉢植えの花もたくさん預けてくれた。日本人って、すごいなあとつくづく思った。

泣いて喜んでくださった訪問看護師
 相馬で3ヶ所、南相馬で2ヶ所の訪問看護ステーションに届けた。南相馬のあるステーションに伺ったときのこと。病院の中に事務所を持っているところ。荷物を運び込んでいるときに、所長さんが訪問から帰っていらした。そして、事務所の机の上にある花(桜も含め色とりどりの花)を見て、「うわー!、・・・・」と目を真っ赤にして大粒の涙で笑顔で泣き出した・・・。ちょっと表情を変えて、ええっ、本当にビールもいただいていいんですか。大好きなのに震災以降飲んでいないんです。手に入らないんです! うれしい!!」とおおはしゃぎ。「食べ物は、なにかはあるので食べてはいるけれど、そうね、牛乳やヨーグルトは3週間くらい口にしていないので、きゅうりもうれしい!!」
「ここは、見ないで下さい」とカーテンを閉めなおした。「ここは、今は私の家なのよ」と。なんとずっと病院に寝泊りしながら、仕事をしているという。病院の看護部長さんもお見えになり、何人もの看護師が病院に泊まりながら、お互いに励ましあいながら病院の再開の準備をしているという。
 所長さんは、家は原発から20km圏内で立ち入れなく、「避難所は、3日でストレス、1週間で限界だった。アパートを探そうにも被災した人がたくさん待っていて入れない。仮設住宅に入った人の後に空いたアパートを探すしかないのよ。そのうちなんとかなるわよ」

被災した利用者さんが喜ぶわ
 桜の束を渡して、
「これ、花見山の桜なのよ。利用者さんのお宅にでも、避難所にでもどうぞ。使ってください」
「わあっ! 今年は花見山に見に行こうとみんなで言っていたんです。とってもうれしいし、何より利用者さんの心が和むと思いますよ」

 私たちの会話とようすを見ていたボランテイアの人たちが、「宮崎さん、どうしてあんなに明るいんでしょうか? 看護師さんてみなさんこんなに元気なんですか?」と。本当に・・・。被爆のこともあってもっとも大変な状況にあると思われるのに、「私たちは、まだいい方ですよ。こうやってみんなでわいわい励ましながら、毎日過ごしているし、こうやってわざわざ来ていただけると、元気100倍! うれしいですよ。もっともっと大変な人たちがいるんですよ」と。そのあと、聞いたのですが、予測できないたいへんな状況に遭遇している訪問看護師がいたのです。そのことは、次回。つづき。

とにかく、さわやかに純粋に明るいんです。

 
まだまだ続きます。町の様子や、介護・看護サービスなどのついても順次書いていきます。 間をおかないで書いていきます。      4月30日記