突然の『解雇』

突然の『解雇』       2014年1月15日分

 私のことではありません。訪問看護ステーションをいくつも立ち上げた営利法人(株式会社)に勤めている知人の訪問看護師の話です。

営利法人開設の訪問看護ステーションが増えている
 介護保険がスタートする前(2000年以前)は、訪問看護ステーションは、民間営利は事実上開設することはできませんでした。ですから、訪問看護ステーションの開設主体は、医療法人が50%強、医師会立10数%、看護協会立10数%、その他社会福祉法人立、地方自治体立、日赤、生協などとなっていました。
 ところが、介護保険スタートから13年たった現在、その様子がだいぶ変わってきました。営利法人(株式会社)の開設の訪問看護ステーションが増えているのです。
 平成24年4月の調査では、医療法人立が約4割、営利法人立が3割弱となっています。すごく増えたのです。その上、ここ2年ほど、全体的にも営利法人立も急増しています。
 営利法人とは、株式会社やNPO法人で多くは株式会社です。その中の半数は調査結果では、看護職が株式会社を立ち上げ訪問看護ステーションを開設しているところなのです。

一般企業での開設
 最近の傾向として、医療・介護関連ではない一般企業の方々が訪問看護ステーション立ち上げているのが増えてきました。ただ、介護事業者のように大手が全国展開している企業は多くはありません。
 介護保険開始に当たり、訪問看護ステーションに民間企業参入が可能になっとき、多数の様々な企業が訪問看護ステーションを開設したのですが、それはほとんどといっていいほど失敗し閉鎖しました。訪問看護事業は、一般企業の常識やルールではうまくいかない難しい“何か”があるのだと思います。
 そうはいっても、私が勤めている全国訪問看護事業協会に開設相談の電話がたくさんかかってきます。圧倒的に一般民間企業の方からです。それは開設してくれるという意味ではとてもうれしいことではあります。

しかし、突然の『解雇』
 私の知人(Aさん)のつい最近の話。
『昨日、会社の上司から、突然「明日から出勤しなくていい」といわれたんです。どうしてか理由を聞いたんだけれど、訪問看護ステーションの職員(Aさんの部下)から、Aさんが上司では働きにくいという声が上がったからだというんです。誰なのか、詳しくどういう内容なのかを聞いても教えてくれないんです。私が察するところでは、会社は私が邪魔になったんだと思います』
私「どうして、Aさんが邪魔になったの?」
A「訪問看護ステーションを立ち上げるときには、会社は何もわからなかったから私に全部をまかせるということで権限と給与保証してくれました。それで私は、とにかくいい訪問看護ステーションを作ろうと看護師を集め、運営規定を作り、地域の医師と連携を持とうと動き回わりました。その結果、利用者が集まり、経営的にも黒字でうまくいき、そして2号店、3号店と開設してきました。順調になってきたところで、他の看護職員も慣れてきたので、部長の私の給与がもったいないと思い始めたようです。いい加減な理由で出勤しなくていいと。どうしたらいいと思いますか。訴訟した方がいいでしょうか。それとも・・・」
私「難しいねえ。私だったら・・・・・」

人間よりも『金』重視という性格・・・企業
 一般化していいのかどうかわかりませんが、民間企業には、『経営最重視』の傾向があるのではないでしょうか。それが企業というものだと言われたこともあります。「当たり前だ」と。
 優秀な訪問看護師が必死で地域の中で信頼関係を作り、その人の『顔』でケアマネ・医師・利用者と結びついているのに、“もう用済み”といわんばかりに肩たたきをされてしまう。どうなのでしょうかねえ。

逆襲した訪問看護師も
 同じような境遇にあった訪問看護師が一人や二人ではありません。耳にしたり相談を受けたりします。あるいは、そのために会社を辞めたいと思っている訪問看護師もたくさんいるのは確かです。
 Bさん(知人)は、同じような扱いを会社からされて、それですぐに辞めて自分で株式会社を立ち上げ、同じ地域に訪問看護ステーションを立ち上げたそうです。そうしたところ、辞めさせられた会社に勤めていた訪問看護師たちがBさんの会社の訪問看護ステーションに職場を変えたいと自ら移って(Bさんが引っこ抜いたわけではないと強調していました)、利用者もBさんの訪問看護ステーションに移ってきたそうです。結果的にもともとの会社は訪問看護ステーションを閉鎖したとのことです。

 こういうことがいいことかどうかは何とも言えませんが、利用者目線で考えると右往左往させてほしくないですね。
 この逆もありますので、続きは次回。