紅葉三昧

紅葉三昧 10月25日分

 テレビなどで紅葉の便りを見聞きすると、どうしても心騒いでしまうんです。テレビという数十センチ角の中で見るのでは満足できないんです。それで、毎年何とかうまく見計らい紅葉の中に身をおくようにしてしまう。簡単にいえば、紅葉を観にいかないと気がすまないんですね。

山形の葉山の紅葉
 ちょうどいい時期に山形からの講演依頼があり、喜んで出かけました。一日中話し続け、その足で久しぶりに実家に泊まりに行きました。私の実家は、山形の内陸地方で、月山・葉山と二つの山が並んでいる葉山の麓の村です。さくらんぼで有名な寒河江市です。
 久々の私の帰省を、母や兄家族は喜んでくれて土地ならではの昔からの食べ物をたくさん準備していてくれました。お酒を飲みながら何を話したか分からないほどたくさんのおしゃべりをして・・・。ありがたいものです・・・。心からうれしかった・・・。
 さて翌日、快晴! 夜明け前から目が覚めあたりの景色をみました。紅葉真っ盛り! 実家は国道から4km山に入っていった山村なので、周りは山・山・山。それが紅葉なのです。紅葉は時間帯で別物に見えるほど光で変化します。なので、朝陽を浴びた紅葉を見ようと、夜明け早々に母と車に乗り葉山に向かって紅葉ドライブに出かけました。
「わーっ、きれい!」「この黄色が鮮やかできれい!」「山の上から見るとそこら中オレンジの絨毯のようだね!」「ちょっとあるあざやかな赤と緑が引き立たせるね!」と、きれい!の連続でした。ため息が出るほど、声にならなくなるほど綺麗でした。ブナが多い山・山。木の種類で配色が違うが、この山は実に綺麗な配色。あまり知られていない秘湯ならぬ「秘紅葉」の場、
 何度も車から降りて。紅葉の真っ只中に身をおく・・・。ひんやりとした空気と風と香りと葉のささやき、落ち葉がハラハラと落ちる音が聞こえるような・・・。全身で五感で感じる・・・。それも誰もみに来ていないので、私たち二人だけの山・紅葉のようなのです。
 もう満足! 身も心も満足し、リセットされた気分でした。

蔵王の温泉に
 兄が、帰る前に他にどこか行きたいところはないかと聞いてくれました。それで、紅葉を感じた私の全身がふと求めたのが、「蔵王温泉」でした。兄と母が車で飛ばして連れて行ってくれました。
蔵王温泉郷に入ると、硫黄のにおいがプーンとしてきます。「これだ!」とうれしくなりました。入り口の箱に200円を入れて入る地元の人が利用する昔からの共同浴場に入りました。
「あちっ!」熱くて長く入っていられないほどの温度。ちょっとした傷口にピリリとしみる。湯花だらけの浴槽にたくさんの白い湯花が浮いている湯。一番の刺激は強い硫黄のにおい。
「これだ、これが温泉だ」「いい湯だなあ~」「やっぱり、温泉はこれだ」と、満足しました。
 私は、この蔵王に小さいころから何回か祖母に連れられて湯治に来たことがあります。お米持参で自炊で1週間ほど泊まって温泉で休養するのです。農閑期や病気療養中など。だから、私の中では温泉といえば、硫黄のにおいがぷんぷんとする熱い湯のこの蔵王温泉が原点なのですね。

 秋の半日を存分に楽しませていただきました。根っから大自然の中で育った私は、全身の細胞が求めるのでしょうか、季節を感じられることを求めるようです。そのことで『満足』し、『元気』を取り戻し・・・。ありがたい半日でした。