経管栄養ビジネス その2
経管栄養ビジネス その2 8月15日分
前回の続き。
“命を張って”とまではいわないが、それほど詳細に情報を集め問題提起をしている方がいる。この地域で働く成年後見人(社会福祉士)のAさんである。ご本人は名前を出してもいいとおっしゃっているが、ご迷惑がかかると申し訳ないのでA氏とする。(ブログに書くことも了承)
A氏のインタビューより
A氏は、成年後見人として「寝たきり高齢者専用住宅」に入居している利用者に関わる中で、“おかしい”と思うようになり、この問題にずっとかかわり膨大な客観的な資料を収集しながら問題提起をいている。
・ 10年位前から知っている。監査などが入るようなことになると会社名を変えて事業は継続している。5回くらい会社名が変更している。(その登記簿を入手している)
・ 4年前に、成年後見人のケースの件で関わった。経口摂取が不十分ながら可能なのに経鼻経管栄養をおこなわれていて経口摂取を試みてほしいといってもやってくれなかった。それで別な病院に入院して試みたところ、経口摂取が可能になり、リハビリをおこなってかなり改善した。ここが状態を良くしようという取り組みをしないことが大問題。
・ ケアプラン通りに在宅サービス(訪問看護・訪問介護など)が実施されていない可能性があるのではないかと県に相談したが、取り合ってもらえなかった。
・ 1年前も成年後見人として別なケースに関わった。ケアプランの変更を申し出たが、そうしたところ、ケアマネジャーではなく、家主(こわくて話ができないような雰囲気)に「いろいろいうな」というような内容を言われた。その後、面会の時に隠しカメラでさまざまに撮影した。それは中京テレビで放映された。
・ どこが紹介しているかというと○○病院の退院調整看護師がどんどん紹介している。要介護5で経管栄養の人の退院先がとても少ないので、安易に紹介しているように見えるとのこと。
・ 家族からのクレームはない。家族はよくわからないし、家で介護することが困難なのでありがたいと思っている。ケアそのものがいいかどうかはわからない。みんな管につながれ、6畳・個室のベッドの上で寝ている。車椅子などいっさいない。
・ 訪問看護・訪問介護・福祉用具貸与は、関連(自前)会社が全部行い、ケアマネだけは、県を越えて名古屋の事業所(関連)がおこなっている。(県を越えると監査が入りにくいからではないか)
・ 職員は、訪問看護をしているという自覚はあまりないのではないだろうか。
・ 職員募集のチラシが配布されたが、「訪問」ということはなく、「看護師」「介護職」募集。この地域の中では比較的高い給料だった。(夜勤手当込みで月額36万円程度)
・ 「入居案内」の中に書かれている入居条件は、「要介護5(寝たきり)、経口摂取ができない方・・・・経管栄養・中心静脈栄養・在宅酸素・気管切開・人工呼吸器」となっている。これをどう思うか。
・ 利用料は以下の通り。
入居時 礼金 賃料2か月分(8万円弱)
保証金 50万円(退去2ヵ月後返金)
毎月 ①アパート賃料 39,000円
②光熱費負担金 15,000円
③消耗品代(オムツなど)約19,000円
④介護保険利用分(1割)約36,000円
⑤家族会費 15,000円(ケアプラン外の時間帯の見守り・対応分)
⑥医療保険自己負担金 約50,000円
合計 約 180,000円
ただし、申請すれば特別障害者手当て(3万円)がもらえるという情報提供している。
要するに、1ヶ月 15万円ということになる。
寝たきり専用住宅見学
・ 案内は、その中で仕事をしていた看護師。
・ 15人ずつ2棟。真ん中の廊下をはさんで15部屋が並んでいて、『1号室』『2号室』とアパートのようになっていた。1部屋は6畳強。ベッドとオムツ・着替えなどがあり、個室の病室の中のようだった。どの入居者も完全寝たきりで寝返りができる人はいないと見られた。全員経管栄養。
・ 日中の職員は、看護師2名と介護職2名。夜間は各1名ずつ。
・ 玄関を入った面談室(建物の端の方)に、作業スペースがあり、そこに経管栄養の器具類がずらりとぶら下がっていた。
・ 尿臭などのにおいはなく、全体的には清潔ケアは行なわれているという印象。職員は、てきぱきと動いていた。
難しい問題
・ A氏がいたから社会問題化したが、そうでないと一般にはみえにくいだろう。そういう意味では、全国にこれに似たようなやり方で運営しているところがあるだろうと推測できる。
・ また、近所の住民に事情を聞く機会があったが、「やっているのは某組織の人ですよ。新聞沙汰になってから東南アジアの国にいっているよ」という。『隙間ビジネス』というか、『必要悪ビジネス』というのか、そこに某組織が絡んでいる。これを運営している大家(株式会社ケアメート)関連だが、悪徳で儲け主義的に意図的に実施していると見えた。
・ しかし、要介護5の経管栄養の人たちの行き場がなく困っているのは、日本全体の大問題であることも再認識した。
・ また、現場に行って思ったのは、そこで働く看護職と介護職の対応もケアが悪質である印象は薄いのである。社会的な仕組みがわからないご本人・ご家族は預かってくれてほどほどの料金的負担とほどほどのケアを受けられれば苦情や不信にはならない。実際に苦情などなく、ありがたいと思っている人も少なくないという。
・ では、一体何が問題になるのだろうか・・・・・。法的にも指摘する問題は見えにくい。実際にマスコミで取り上げられているのに、この会社のこのやり方はこのまま継続している。
・ ただ、ここで働いていた看護師が“何かおかしい”と感じ辞めてはいる。給料がいいので辞めないで働いている看護職・介護職もいる。
・ 日本での方向性は、重介護になっても小規模の家・住宅らしきところ、それも町の中で暮らしあうということに重点を置いている。だから、10人から20人の方を普通の家のような環境で、病院や施設ではない雰囲気・環境で過ごしていけるようにしようという取り組みが全国で活発化している。多くは良心的に、私財をなげうって試みられている。
・ しかし、それをビジネスチャンスとして行うやり方は、何かおかしいし、大きな問題だと私は思う。かといってこういう方法での運用ができなくなるようにすると、いい意味での新たな芽がつぶれてしまう。
・ とても難しい課題である。
最後に、A氏の生き方・信条をご紹介しよう。
『愚行権の行使』・・・なるほど・・・・・。