花おじさん

花おじさん           3月25日分

 私が属する法人関連の病院・老人保健施設・特養ホーム・グループホーム・事務所などには、いつも緑や花がいっぱいです。また七夕には笹が、クリスマスには本物のツリーがどこからか届きます。これを寄付し続けている方が、みんなが『花おじさん』と呼ぶ、88歳の男性の方です。先日、この花おじさんにお願いして東京都北足立花市場に連れて行っていただきました。花をたくさん、それも非常に安く手に入れる必要が出てきて、私はそれを求める担当になりました。どうすればできるかと考えた結果、花おじさんに市場に連れて行ってもらって、そこでとにかく手に入れることにしようとなったのです。朝6時に出動開始。足立区舎人(3月30日に舎人新線が開通します)にある市場に、花おじさんと私と息子(荷物を持つ係)の3人で出かけました。そこで花おじさんの元気の秘訣を垣間見ました。

市場は活気あり!
 市場には誰でも入れるわけではないそうです。花おじさんがかぶっている番号の札がついた帽子がないと入れない。私たちは花おじさんといっしょだから入れたのです。市場には、花・鉢植えなどがたくさん・たくさんありました。私たちがいった日は、鉢植えの日でした。回転寿司のように流れていく鉢植えのケースが指と目と言葉で売買されていくセリ(競り)です! 人々が威勢良く動き回ります。何とも活気があります! 花好きな私はあれもこれも欲しくなってこの購買欲を抑えるのが大変でした。でも買えません。だいたいは売買の単位がちがいます。1鉢とか1本単位ではなく、1ケース・10本単位などです。好きな花をたくさん見れて、まさに目の保養になりました。
 さて、お役目は花おじさんの紹介の仲買人さんに頼んで無事に予算の範囲内で花を手に入れることができました。
花おじさんは、歩くときにちょっと足が小刻みになりますが、とにかく歩きます。私たちにいろいろ見せてくれるために本当に歩きました。あの広い市場の中をどんどん歩き、花のほうだけではなく、青果市場のほうまで足を伸ばします。知り合いがたくさんいて元気よく挨拶を交わしています。しかし、仕入れをしているわけではないのです。おじさんにいろいろ聞いてみました。

「してもらう」のではなく「してあげる」
 花おじさんは、元々やおやさんです。もうずいぶん前に息子さんに店を譲り悠々自適の生活です。88歳といえば、もう亡くなっているか、生きていてももう寝たきりになったり、認知症になったりしている人も多いのに、このおじさんはいつも元気で笑顔でお話が大好きなのです!
 元気の秘密を探ってみました。その一つは、とにかく、毎日市場にいくことです。①早起きをする ②とにかく歩く ③声を掛け合う ④好きなおねえさんに会いに行く。仲買人さんのお姉さん(50歳代)?に毎日会いに行き、「おはよう! 今日も会いにきたよ! いつもきれいだね。顔を見るのが楽しみだよ。今日はどれがお買い得だい」と声をかけるのです。そうするとおねえさんが、「おはよう、あらうれしいわ。きれいだっていってもらって。おじさんもいつもきれいな人連れてくるじゃない。安くするよ」と、言葉がリズミカルに飛びあうのです。そのおねえさんが本当にきれいな方なのです。
 あの活気ある雰囲気に身をおくだけでも元気になりそう。

 花おじさんは、20歳で戦争にいき、26歳で終戦を迎え、その間、中国・タイ・ラオス(ビルマ)・インドと転々としたそうです。「戦争はひどかった。やっちゃいけない」と繰り返します。私の20歳の息子にもその話をしてくれます。

 要介護状態にならず、毎日人々と触れ合い、花や緑を通じて喜びや潤いを人々に感じてもらう。「人が自立して生きる」ことを身をもって示してくれているように見えます。「高齢だからなんでもやってもらう」という受身ではなく、「人になにかをやってあげる」「自分で何かをする」という前向きで主体的な姿勢・生き方がすばらしい!
 楽しい朝でした。花おじさん、ありがとう!