負の連鎖を断ち切る
負の連鎖を断ち切る 7月25日分
「自分って、どうしてこうなんだろう」と歯がゆく思うことはないですか。自分ではそんなふうにしようとは思っていないのに、そうしてしまう自分がいる。私もいろいろ思い当たります。
妻妾同棲の生活
先日、知り合って間もないAさん(50歳代前半、男性)とBさん(50歳代後半、女性)と三人ではじめて夕食をともにしました。なんだか知らないのですが、気があうようなのです。仕事も性格もさまざまにバラバラ。
話の途中でAさんが、こんな話をし始めました。
「僕の家は『妻妾同棲』だったんですよ」
「ええっ。妻妾同棲って、あの、本妻さんとおめかけさんがいっしょに暮らすというの?」
「そう。母は何人かの父のおめかけさんといっしょに暮らしていたんだよ。愚痴も文句も言わず、そういうものだと思って・・・。だから、家には『個』『プライバシー』などというものはなく、食事のときもいつも『公』だった」
「ヘイ、妻妾同棲ということが死語で昔の話かと思ったら、つい先日まであったんだ。お父さんはそんなにお金持ちでいい男だったの?」
「自分は、東北の有名な大きな料亭の息子。ある時期まではお金の苦労をしたことがない。祖父母や母が料亭を切り盛りして、父は半ばアルコール中毒で遊びだらけの人生だった。そして気に入らないことがあると暴力を振るっていた。自分はそれがいやでいやで・・・。遊びには連れて行ってもらっていい面もたくさんあるけれど・・・。だから、早く家を出たいと強く思い、東京の大学に入学し、それ以降東京での生活になっている」
子どもに暴力を振るってしまう・・・と
Aさんは続けて言う。
「『負の連鎖』を断ち切るのにたいへんな思いをしているんです。父は暴力を振るっていた。自分はそれがいやでいやで仕方なかったのに、自分に子どもができて思い通りにならないときに、無意識に自分が子どもに暴力を振るってしまうんですよ。なんと情けないか・・・。そして妻にどうして暴力を振るうのかといわれる。いけないと思いながら無意識に手が動いてしまう『負の連鎖』というものがあるんですね。ほっとけば、自分の子どもや孫まで代々連鎖してしまうかもしれない哀しいものがあるんですね。
だから、自分の代で断ち切らなければならないと決意しているんです。妻に指摘してもらいながらがんばっているんです」
プラスの連鎖、マイナスの連鎖
Aさんは、マイナスの連鎖の話をしみじみと話してくださった。あって間もない私とBさんに、「何だかわかってもらえそうな気がして、ついしゃべっちゃいました」と。
自分自身の思考や行動が、自分の中から形成されたものだけではなく、無意識に誰からか、どこからか引き継いでいるのでしょう。それは遺伝で変えられないものではなく、意識化しなければならない。
“マイナス・悪の連鎖”だけではなく、“プラス・善の連鎖”もあります。知らず知らずに、“人の手助けをしよう”“お金より大事なものが社会にはある”などと、人のために昼夜を忘れて動いている人もいます。
それを自覚し、自分がプラスの連鎖だと思うことは伸ばし、マイナスの連鎖だと思うことは、Aさんのように思い切って自分の代で断ち切る努力をしなければならないのだと思います。
いい酒を飲み、楽しく語らった会でした。