財務省の人と

財務省の人と      8月25日分

 先日、財務省の知り合いの方に、12年ぶりにばったり会いました。それは、厚生労働省の某局長が7月で退官したのですが、次の門出を祝う会に出席した場でのことです。壇上であいさつをされた財務省の方をみて、どこかで見たことがあると思って思い出したら、それはなんと12年前にニューヨークでいっしょに食事をしたのでした。私のことなど忘れていると思ったのですが、あいさつにいったらちゃんと覚えていてくれていて、そのとき話した内容も覚えていて「また飲もう」などと立ち話をしました。

ニューヨークで
 それは、1996年の話です。私は、様々な国の在宅ケア・訪問看護の勉強に年1回程度企画し、いっていました。アメリカの話はよくも悪くもよく聞くので、一度きちんと視察しなければと、ニューヨーク州ロチェスター(コダックの本社があるところ)に1週間いったのです。日本の医師・看護師・教師など8人くらいのツアになりました(私がコンダクター)。すごく勉強になったツアです。そのとき受け入れてくれたシンクタンクの社長さんとはいまでも仲良しです。社長さんが、地域の保健・医療・福祉の様々な活動のツナギ役をしていて、人も内容も一番よく知っているのでした。
 それはさておき、アメリカに行く前にちょうど厚生労働省の知人に会ったので、「ニューヨークに行くんだけど、向こうで会ってきたほうがいい人いない?」と聞いたところ、「厚生省のA君が、ニューヨーク勤務になっているから、彼に頼んでおくからいっしょにまわってきたら。そうだ財務省のBさんも長期間いっているよ。日本ではなかなか会えない人だから会っておいでよ」といって二人を紹介してくれました。
Aさんとは、いっしょにアメリカの訪問看護に同行しました。そしてBさんと夕食をいっしょにするというセッテイングになったのです。Aさんもツアで同行した人も3人ほどいっしょです。
 
日本が誇れることは・・・
 高層ビルが連立するマンハッタンのどこかのレストランで会ったのですが、たくさんの話の中で、私が印象に残っているのは2つのことです。
 Bさんは、高層ビルの上を見ながら、「これらのビルの上にいる会社の社長たちはどれくらいの給料をもらっていると思う? 日本の普通の社長の2桁くらい多い額だぞ。この国に勝てることはあまりないよ。桁が違うし、アメリカから見ると日本などone of them(それほどでもない国の一つ)に過ぎない。しかし、日本がこの国に勝ることがある。それは社会保障・その仕組みだけだ。それほど多くないお金で国民全体の健康水準を上げ・乳児死亡率を下げ、それなりの福祉を実現している。アメリカは格差が激しすぎるし、国全体の社会保障はなっていない。金持ちにはいい国だ」というような内容のことを言ったように記憶しています。
 それから12年経った日本をどう評価しているのでしょうか。日本の実情もずいぶん変わりました。聞いてみたいものです。

大学5年制について 
 Bさんは続けてこういいました。
「僕は大学を4年制ではなく、一年間追加して5年制にしたらどうかと思っているんだよ。その1年間を福祉や介護の施設・現場に身をおいて、実際を見ながら考える時間とする。これから日本は高齢社会。頭で理解するのではなく、実際に見て世話してみて実感することが大事。その若者たちが経済の分野でも外交面でも、製造の分野でもどこでも役立ち、日本が豊かになるような気がするんだけど・・・。宮崎さん、どう思う? 現場は実習を1年間受けてくれるかね?」
私「それは、とても興味深い話ですね。現場は短期間の実習は非常に煩雑でたいへんですが、長期にいてくれると“手”になりますよ。ドイツでは、徴兵逃れ(徴兵制があり1年間の服役の義務があるが、それを逃れるためには、福祉の現場で1年半働けばよい)の若い人が福祉の現場にたくさんいました。耳に穴がたくさんあいているようなロングヘアの男性たちが、結構溶け込んで役割を果たしていましたよ。一考の余地があると思います」
Bさん「そうだろう。その1年間のお金を誰が負担するかだよ。ドイツは徴兵制だから国が負担しているんだろうな。日本は親が負担するかね・・・。そもそも、どの省庁が言い出すのがいいかね・・・」
などという会話をしたのでした。
 その後、日本では大学5年制の話は出てこないので、そのままになったのでしょう。財務省の大幹部になられたBさんが、その後どう考えているか聞いてみたいものです。