6月はさくらんぼ

6月はさくらんぼ    2016年6月30日分

 一年は、あっという間に過ぎていく。“この早春の景色をあと何回見られるのだろうか”“このおいしいさくらんぼを生涯であと何シーズン口にできるのだろうか”と、高齢の方からこんな声を時々聞く。“何言っているんですか”などと受け答えしてきた私だが、私も最近ふとそんな言葉に真実味を感じる。人生に限りがあり、自分がこの世からいなくなるのが、遠い将来ではないのだということをきちんと受け止めなければと思う。

10数年後を見越して
 私が小学生の頃に、山形の私の村から8kmももっと山に登った開拓村でさくらんぼが植えられ始めた。地元では『さくらんぼ』とは呼ばず、『桜桃(おうとう)』と呼んできた。詳しくは知らないが、私の家でも種類の違う3本桜桃の木を持っていた。中学生時代など、学校から帰ってお腹がすいていると、たくさんの桜桃を頬張りながら家の手伝いをしたものだ。
 それがある日、「○○開墾に土地を手に入れ桜桃をたくさん植えた。10数年くらいたったら収穫ができて収入になると思うよ」と父が言った。「へっー」と聞いていた。

おいしい桜桃が口に入るまで
 そう言って子どもを育てるように、大事に栽培し育ててきた桜桃が今、たくさんの実をつけて収穫できるようになった。11年前に亡くなった父のあとを、80歳代の母と下肢の障害のある兄と義姉が中心になって、さまざまな皆さんの協力のもとにやっと収穫にたどり着く。
 収穫できるには、多数の壁を乗り越えなければならない。①花が咲くか、②蜂が飛んでうまく交配できるか、③実がなったか、なりすぎていないか、④害虫の被害はないか、⑤実が大きくなったか、⑥赤く色づいたか(天気次第)、⑦甘くなったか、⑧収穫する手があるか、⑨買ってくれる(注文)お客さんがいるのか、⑩運送屋さんが丁寧に扱ってくれたか(すごくデリケート)等など、おいしいと思える桜桃がお客様のお手元に届くまでにはたいへんだ。おいしい桜桃が口に入ったら、それはその全部がうまくいったちということだ。

今年も何とかできた『さくらんぼ農家』
 その年によって収穫の時期は異なる。早い年は、6月中旬から収穫・発送。
遅い年では、6月下旬から7月上旬の収穫・発送。2週間ほどのずれがある。
 今年は、早かった。6月19日から発送し、約1週間の収穫の時期である。やっと終了し、後片付けもほぼ終了しているところである。今年も何とか『さくらんぼ農家』をすることができたといえよう。

全国の皆さん、ありがとう
 私の担当は、全国各地の知人から注文を受け、収穫を手伝い、そして選別・梱包、発送作業。数日間『さくらんぼ休暇』。全国の皆様のあたたかい励ましと「今年のは特別美味しかった」「20年間、お宅のサクランボをいただいているが、今年が最高!」「どうして他と違ってこんなに大きく甘いさくらんぼになるのか」などという声が原動力です。予測することが極めて難しい収穫の時期にうまく合わせて全国から集まってくださる知人・友人の皆さま、本当にありがとうございます。夜が明ける前から収穫、本当に感謝です。その前後の作業に地道に手伝ってくださる皆様がいらっしゃるから“収穫”までこぎつける。ありがとう。
 
いつまで続けられるか・・・
 しかし、母・兄・私のだれか一人が欠けたら続けることができるかどうか・・・。
毎年、「今年が最後になるかもしれない」と思いながら、噛みしめながら『さくらんぼmonth』の6月を過ごしている。今年も無事に6月を乗り切ることができた。ありがとうございました。