8月5日

8月5日
『後期高齢者医療制度』
いつ国会で決まったのか、どんな制度なのかよくわからない『後期高齢者医療制度』。国民に、医療関係者にどんな影響があるのかわからないが、来年4月からスタートする。75歳以上の高齢者をめぐってかなり大幅に変化がありそう。
8月4日(土)に、後期高齢者医療制度を考えるシンポジウム実行委員会主催で、綾瀬プルミエで開催された。久しぶりに人前でコーデイネーターをし、いっしょに学びました。シンポジストの方の資料をもとに概要をまとめると以下の通り。

<シンポジスト>
① 渡辺俊介氏(日本経済新聞論説委員・社会保障審議会委員・東京女子医大教授)
② 野中 博氏(野中医院院長・社会保障審議会後期高齢者医療のあり方に関する
特別部会委員)
③安達智則氏(健和会医療福祉調査室室長)
<コーデイネーター>
 宮崎和加子 (看護介護政策研究所所長)

◆ 制度の仕組み
◇対象者  75歳以上の人(後期高齢者) 約1300万人
      75歳以上の人は、これまでの老人保健法の「老人医療」や、国民健康保険などの対象ではなく、「後期高齢者医療制度」1本となる。
*ex 現在、75歳以上の人は、3つの保険証を持っている。
   「老人医療証」「国民健康保険証」(国保の場合)「介護保険
証」これが、来年4月以降、「後期高齢者医療証」と「介護保険
証」のみとなる。
◇医療費  現時点で75歳以上の人の医療費は、11.4兆円
      この水準を基にして制度設計している
◇財源  ①高齢者からの保険料 10%
②公費 50%(国:4、都道府県:1、市町村:1)
     ③支援金40%(各健康保険制度の保険料から)
◇保険者 
新たな地方自治体の広域連合(都道府県内の全市町村が参加する広域連合)これまでの、介護保険や国民権保険は市町村が保険者だったが、今度は「広域連合」という新たな地方自治体(中間的自治体)。このことによる国民への影響が今ひとつわかりにくい。「広域連合」では、議会があり東京都の場合、すでに31名の議員が決まっている。保険料などもここで決まる。だから、各県によってかなり保険料が違う可能性がある。
制度のあり方について、市民・国民が意見・提案・苦情などを言っていく必要があるが、新しいこの自治体がなじみがなく、制度そのものが国民から遠くなるのではないかとの懸念あり。
◇保険料
 広域連合ごとに決定(広域連合議会が条例で決定)
 応益割(頭割り)と応能割(所得比例)の合計
   応益割の全国平均は、月額約3100円
例)・厚生年金の平均的な年金額(年208万円)の受給者
   応益割:3100円 + 応能割:3100円 =6200円(1ヶ月)
例)・自営業の子どもと同居の人の場合(本人の基礎年金79万円。子ど もの年収390万円)
       応益割:3100円 + 応能割:0円 =3100円(1ヶ月)
例)・一人暮らしの基礎年金受給者の場合(本人の基礎年金79万円)
       応益割:900円(7割軽減) + 応能割:0円 =900円

◇診療報酬体系
  まだ、骨格も決まっていない。骨格が決まるのがたぶん、12月ころ。報酬額が決まるのが、2・3月ころではないかとのこと。
 医療は、主には、入院医療・外来医療・在宅医療の3本柱。それぞれについての医療費の支払われ方がこれから議論し決まっていく。今の段階で提示されていて検討しているのは、『総合医』の制度化?。外来医療や在宅医療で、高齢者が主治医(総合医)を決めて、身体だけでなく、生活もみてくれる医師を選ぶ。その医師が定期的に身体や心や家族のことまで把握し相談にのるというもの。また、地域のケアマネ・訪問看護師・他の専門家といっしょになってサポートしていくというものだという。
(詳しい資料など希望の方は、連絡を)

◆本当に安心して医療を受けられるような制度になるのだろうか?
 シンポジウムに参加した200名弱の方は、一般市民・医療関係者・福祉関係者。質問・意見もたくさん出た。具体的に、●75歳以上の夫と75歳未満の妻の二人暮しの場合の保険料の算定方法は? ●実は障害者もこの制度の中に入ることになっているというがその実際は? ●75歳未満の前期高齢者は老人保健が残るのか ●参院選の結果は、医療改革にどう影響するか ●高齢者が増えていくと保険料もどんどん上がっていくのではないか など。
 会全体では、少しは「後期高齢者医療制度」についてわかったという印象。ただ、給付体系(診療報酬の骨格)が決まっていないので、海のものとも山のものともいえない。強く思ったのは、診療報酬の骨格や報酬額が決まる前に、現場からのさまざまな提言・提案をしていかなければならないということ。そのための動きを私も頑張っていかなければと思いました。
 当面でいうと、健和会全体で行っている『死亡に関する調査』を担当させてもらっていて、それを早期にまとめて発表することです。病院・診療所・福祉施設で健和会関係で発行した死亡診断書調査、訪問看護ステーションで関わった方の死亡調査、特養ホーム・老人保健施設・グループホームなどで亡くなった方を詳しく調査中です。人は、実はどうやって死んでいるのでしょう? 統計だけでなく、生々しい実際をまとめ、何らかの形で政策に反映できるようにがんばっていかなくては!

どうしても心配が残るのは、そもそもこの制度ができた背景が財政問題ということ。高齢者の医療費抑制を目的に創設されるとすれば、果たしてじっくり生きて、しっかり介護も受けることができて、満足した気持ちで生をまっとうできる医療制度になるのだろうか??  黙ってみていないで、意見をいい、提案し、行動する・・・。そういう意識ある市民運動・医療運動を行わないと・・・。ね。

*私への連絡先は下記です。よろしくお願いいたします。
 健和会の仕事を一部担当させていただいています。

連絡先   宮崎和加子
120-0022 足立区柳原1-29-16 看護介護政策研究所
fax 03-5813-7396
         mail info@miyazaki-wakako.jp