EPAをめぐる近況
EPAをめぐる近況 9月5日分
2008年にはじめてインドネシアからEPAで看護師・介護福祉士候補者が来日したときや、国家試験発表のときなどはマスコミも国民も関心を寄せていましたが、このごろはあまり話題にならなくなっているようにみえるEPA(二国間経済連携協定)。日本人のというのか国民のというのか関心を持ち続けない・・・。
さて、EPAの看護師・介護福祉士の受け入れに関して、一体どういう状況になっているのでしょうか。
ガルーダ・サポーターニュースNo.13(2012.8.31発行)に共同代表・事務局長の星さとるさんが記載した記事がとてもわかりやすくまとまっているので、転載させていただきます。表に出てこない種々の問題が起きています。
以下、転載。
ベトナムからの受け入れ
まず、ベトナムからの受け入れのスキームが固まりました。目新しい点としては、入国前の日本語研修は1年間で、日本語能力試験N3をクリアした者のみが候補者として来日します。ベトナムはもともとは漢字文化圏であったこともあわせて、インドネシア、フィリピンからの候補者に比べて、この方式によって合格率は高くなるかもしれません。
緊急提言
ガルーダとしてはまず、10月17日に、関西インドネシア友好協会、日本語教育学会「看護と介護の日本語ワーキンググループ」と連名で、試験時間の延長、総ルビ振りなどを内容とする緊急提言を発表しました。この内容は、後述する政府の試験方式見直しに取り入れられ、実現しました。(前回のニュースで既報)
国家試験
新年に入り、看護、介護とも国家試験があり、合格率は看護11.3%(対受験者数。累積合格者/累積来日人数では8.9%)、介護福祉士37.9%でした。介護については、受入開始時には「ほとんど全滅」との予想が一般的だったのに比べればなかなかの健闘ではありますが、候補者としてではなく有資格者として就労してもらうことを目的とする制度としては不十分な値で、受け入れ希望施設数が減少していることとあわせて、政府に受入方式の見直しを迫るものでした。
国家試験の公式を見直す検討会
これと前後して昨年12月から今年6月にかけて、政府が看護、介護と立て続けに候補者に対する国家試験の方式を見直す検討会を設置し、報告書が出ました。ガルーダ・サポーターズと財団法人日本インドネシア協会の2団体だけが、この検討会の両方にNGOとして意見陳述に招かれました。前述の緊急提言とこれら意見陳述の内容は、ガルーダのホームページに掲載してありますので、詳しくはそちらをご参照ください(先日の総会の案内にも同封しました)。
看護の検討会については紆余曲折があったものの、最終的には看護、介護とも、それぞれ試験時間を1.3倍、1.5倍に延長し、問題文については総ルビのものを選択できるようになりました。介護については、さらにいろいろとかなり画期的な内容が盛り込まれています。これについては、厚労省の担当者である佐々木裕介・社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室長を総会にお招きして講演していただきましたので、後述の報告をご参照ください。
外務省の方からのあいさつ
なお、総会では、外務省の加藤義治・南部アジア部 南東アジア第二課地域調整官から丁寧なご挨拶をいただたこともご報告させていただきます。両氏には、この場を借りてお礼を申し上げます。立場は違えど、受入れを成功させるためにそれぞれの持ち場で努力している点は一緒なので、今後ともNGOならでは領分から、成功に向けて共に努力していきたいと思います。
准看護師試験を受験
時間的には前後しますが、看護については都道府県の准看護師試験を受験する動きも広がっています。制度のあり方として果たしてそれでいいのか、受入開始当時の法整備における厚労省看護課の不手際なのではないかという気もしますが、事実問題として現行の保健師助産師看護師法には、看護師試験を受験できる者は准看護師試験も受験できるとだけ書いてあるので、法的には可能です。准看護師になると「医療」の在留資格で准看護師の免許を受けた後四年まで滞在することもできるのですが、看護課としては「医療」で就労させたくないらしく、在留資格を切り替えたいのなら1度出国して再入国せよ、それよりも「特定活動」で滞在し続ければEPA向けの補助金も利用できますよ、と言わんばかりの通知を出しています。
帰国後合格者の看護師免許証が交付されない
また、滞在期間が終わって帰国後、来日して受験した人からも合格者が出ましたが、この人には未だ(8月31日現在)看護師の免許が交付されていない模様です。理由は、免許取得手続きのための入国ができないためです。国家試験に合格した人にいつまでも免許を出さないというのは言語道断です。以前から、「帰国後も受験できる」と言っていたのですから、合格した場合の手続きを予め整備しておくべきだったはずです。EPA「特定活動」の入国手続きを所管する厚労省外国人雇用対策課の不手際と言わざるを得ません。あまり長引くようだと国会やマスコミで問題になることも考えられます。
国家試験に合格しても帰国?・・・
残念ながら、看護、介護とも、合格後に帰国してしまう人が少なからず出てきており、新たな問題となってきています。母国で結婚する、家族を日本に呼び寄せられない等の理由が聞こえてきています。家族呼び寄せについては、制度上の問題なので、今後、取り扱いが焦点になっていく可能性があります。ガルーダでも、帰国原因の調査をし、必要な提言等を行っていく計画としています。
政府の見直しを受けて、受入希望施設の数は若干、持ち直したようです。しかし、未だ低位水準です。候補者のためにも、受入施設のためにも、日本とアジアのためにも、ガルーダ・サポーターズは微力ながら、別紙事業計画に沿って精一杯の努力をしていく所存ですので、ご指導、ご協力お願いします。最後になりますが、会員の皆さん、支援者の皆さん、会費、カンパよろしくお願いします。