村中の人でAさんの退院を出迎えた 2012.11.25分

 在宅ターミナルケアの事例検討会のアドバイサーで東海地方に伺った。アドバイザーなのに私の方が勉強になることも多い。今日はこんな素敵なお話を聞いた。「私のブログに書かせていただきますね。いいですか」「いいですよ」

本人がどうしても家に帰りたいと
 ガンの終末期で入院中の男性。衰弱が激しかったが一定回復した段階で自宅退院する計画だった。本人は、「家に帰りたい」の連発だった。しかし「もうちょっとよくなった段階で退院ですからお待ちください」と説得。
 ところが、病状が急変して命が危ない状態になった。そこで、本人が強く退院を希望していたので数時間の命かもしれないが退院しようと、急遽準備した。「家族は介護の方法も全くわからないが大丈夫でしょうか」といい、受け入れる訪問看護師が「大丈夫です。なんとでもなりますから本人の意向を尊重しましょう」と翌日退院することになった。

満足そうないい表情のAさん
 Aさんは翌日、古い大きな自宅に退院した。家に着いたとき、家全体をゆっくりと見渡ししばらく佇んだ。その時の顔は病院に入院しているときには見たことのない何とも言えない素晴らしい表情だった。そして自分が育てた庭のツツジをみて満足そうに大きく頷いた。「よく咲いている」といっているようだった。

近所・村中の人が出迎え
 「宮崎さん、もっとすごいのがね、出迎えたのが約40人なんですよ! 村中の人といっても過言ではないくらいみんながAさんの帰りを待っていてくれて出向かえてくれたんです!」という。Aさんはにこにこだったし、うれしそうだったし・・・。みんなに「退院できてよかったね」と言われ、何とも言えない表情で頷いていたと。

20人で死後のケアを
 みんなに囲まれて家で過ごしたのは、結局6時間だけだった。静かに息を引き取ったという。
 その後、ご遺体をきれいに整えあの世に送り出す『死後のケア』を行う。訪問看護師が中心となってご家族親族とともに行った。それが部屋に入りきらないほどの家族親族が“自分も”と立ち席で、次々とちょっとずつ体を拭き整えた。“宮崎さん、聞いてください! 死後のケアをした人が20人くらいなんです!!”それはすごいわ~。

無数のドラマを!
ドラマをみているようです。
そういうドラマをたくさん作ろうよ。
その人だけのその人のための無数のドラマを!

誰が作るか・・・・・。
主役は、本人。本人の意思が最も重要!
家族や友人たちは脇役。
私たち医師や訪問看護師は脇役ではない黒子の存在。
そんなふうに私は思う。