イタリア視察雑記2 2015年10月5日分
イタリアの『精神保健センター』
イタリアの精神保健(医療)改革、そして精神病院なきあとの精神障がい者を地域で支える中核機関が『精神保健センター』である。『精神保健センター』というと、「日本にもあるよ」という人がいるかもしれないが、日本には存在しないもの。『精神保健センター』というと、「医療」という言葉がはいっていないので、保健所が予防の視点で相談などにのったりするように受け止められてしまうかもしれない。イタリアの『精神保健センター』の内容は、日本流にいえば『精神保健医療福祉センター』といえるかもしれない。
一つの精神保健センターを視察
今回視察したドミオ精神保健センター(トリエステ南東部の工業地帯、人口5万人、スロベニア国境近くでスロベニア人1万人居住)は、現在1200人の利用者の支援を行っており、看護師30人・PSW2人・リハビリ1人・臨床心理士2人・医師4人体制(2人は研修生)で支援している。24時間体制で、一般市民には、8時~20時まで開放されている。
お泊り用のベッドは、8室あり、夜間体制は、看護師2人とオンコールの医師1人である。泊まりたい人が自発的に1日泊まることもあれば2ヶ月利用している方もいる。宿泊期間は医療の必要度ではない。
食堂(40人)があり、朝食は8食のみ可能(泊まっている方)である。1食は、0、5ユーロ(70円)は個人負担である。衣類を供給する部屋や利用者の自宅の鍵を、自発的に自己管理して欲しいと言いながらも多数の鍵を預かっている。
訪問看護は?
「定期的に自宅を訪問している人は?」との質問に対しての答えは、「今の状況は、毎日20時に2人の看護師で訪問している人が3人いる」ということだった。日本の訪問看護のように自宅に定期的に訪問することが看護師の役割ではないようであった。自宅から出て、地域にでて就労・社会生活することが目標であり、そのためのその人に合った個別プランを作り、試行錯誤しながら支援しているようだった。
信頼関係が最重要 柔軟な連携・統合
かかわり(支援)の基本は、治療的な関わりではなく、人としての関係を作り、幅広い活動を行えるようにすること。そのために多職種が集まったミーテングがあり、個別にアセスメントし、個別支援計画を作成し実施している。まさに、医師、看護師、PSWなど多様な職種のまさに多職種連携。しかし連携の仕方が、先に職種の役割があって分担するというのではなく、一人の患者についてチームで患者・利用者と話し合い、詳しく知り・把握し、プランを作り、そしてその時々に実施していく。そういうやり方のように見えた。決まりごとが多い役割分担ではない。このことがとても重要であり有効だと思った。