EPA・・・政府の基本的な方針
EPA・・・政府の基本的な方針 7月5日分
2008年からEPA(二国間経済連携協定)で人間の移動が正式に始まりました。そして2008年8月にインドネシアから208名、その翌年からフィリピンからも看護師候補者・介護福祉士候補者の来日。政府が認めたはじめての人の移動、また看護師・介護職不足に対する外国人労働者の是非などから非常に注目されています。
しかし、このEPAはたくさんの問題点があり、そのことについてガルーダ・サポーターズでも改善のための提言を何回かに渡って実施してきました。インドネシアの第一陣の看護師は今年の国家試験が不合格の場合、在留資格がなくなり母国に帰国せざるをえないという当初の約束でしたが、これに対して国民の批判も多く、政府は当面の措置として一定の条件のもとに1年だけ延長ができるという対応をしました。介護福祉士の場合は、来年1月に行われる国家試験でたった1回のチャンスで不合格になれば、帰国という決まりです。
最近は来日者数が激減(受け入れ病院・施設の減少)という状況で、この制度は自然崩壊するのではないかといわれるほど。これらさまざまな問題に対して、6月20日に、政府が基本方針を発表したのです。
以下に、そのまま掲載します。この内容の評価についてはいろいろな見方がありますが、私個人の考えでは、私たちガルーダ・サポーターズの『提言』の内容もかなり盛り込まれていると見ています。ただ、まだまだ不十分な点が少なく、具体化にもっともっと発言していかなければいけないなあと思っているところです。
経済連携協定(EPA)に基づく看護師・介護福祉士候補者の受入れ等
についての基本的な方針
平成23年6月20日
人の移動に関する検討グループ
昨年11月に閣議決定した「包括的経済連携に関する基本方針」に基づき設置された本検討グループでは、主要国・地域との間での高いレベルの経済連携に向け、「国を開く」という観点から適切な国内改革を推進するべく、看護師・介護福祉士等の海外からの人の移動に関する課題にどう取り組むかについて検討を進めてきた。
インドネシア及びフィリピンとの経済連携協定(EPA)に基づき実施されている看護師・介護福祉士候補者の受入れに関しては、日本語能力の不足等に伴い、現場でのコミュニケーションの問題も見られるとともに、看護師候補者の国家試験の合格率が低迷し、また看護師・介護福祉士候補者の受入れ希望施設が減少傾向にあるなど、現在の受入れの枠組みの改善が必要となっている。一方、ベトナム、タイ及びインドからも、看護師・介護福祉士候補者等の受入れについて要望が提起されてきている。
今次方針を策定するに当たり、EPAの人の移動に関する分野での当面の課題である看護師・介護福祉士候補者の受入れ等について検討した結果、以下の取組を進めることとした。
Ⅰ 看護師・介護福祉士候補者受入れに関する取組
EPAによる看護師・介護福祉士候補者の受入れ枠組みを改善するため、以下の取組を実施する。
1 日本語能力等の向上に向けての取組
十分な受入れ希望施設を確保し、看護師・介護福祉士候補者の国家試験の合格率及び合格者数を向上させるためには、候補者の日本語能力等の向上が必須である。そのために、本年から開始した訪日前の日本語研修を引き続き着実に実施していくことに加え、相手国の状況や意向を踏まえ、その協力を得つつ、早ければ本年から①候補者に対する現地での日本語能力等の強化、②相手国関係者の我が国看護・介護制度への理解促進のための諸施策の実施に努める。
また、中長期的には、現地主要看護大学等における日本語及び日本の看護・介護事情等の教育の実施や、その際に民間の活力も用いることを目指す。
2 再チャレンジ支援の実施
EPAによる看護師・介護福祉士候補者の中で、国家試験に合格しないまま帰国する者が出てくることが見込まれるが、これら候補者は、一定の日本語能力と日本の病院等での実習経験を有する貴重な人材であることから、引き続き我が国との繋がりを維持し、これらの候補者が母国への帰国後においても国家試験に再チャレンジがしやすい環境を提供することが望ましい。そのためにeラーニング(注)の仕組みを利用した学習支援や現地での模擬試験の実施等を積極的に進める。
(注)パソコンやコンピュータネットワークなどを利用した教育
3 看護師・介護福祉士候補者受入れに関する各国別の対応
既に交渉が開始されているベトナムの看護師・介護福祉士候補者の受入れについては、EPAに基づき本年9月までに結論を出すに当たり、ベトナムの看護師資格制度の整備状況や看護カリキュラムの内容等を確認した上で、一定の日本語能力を有する候補者を受け入れる枠組みについて、検討を行う。
インドネシア及びフィリピンからの看護師・介護福祉士候補者の受入れに関し、協定を改正することなく実施可能な制度見直しは、相手国の理解を得た上で、早急に実施する。また、協定見直しに関する交渉に際しては、インドネシア及びフィリピンの意向もそれぞれ踏まえ、両国間の取扱いに配慮しつつ対応することとし、その際、我が国にとって適当と判断される制度の改革の可能性を真摯に検討する。
その他、タイ、インド等からの要請については、先行する国からの受入れに伴う国内の状況等を踏まえて改めて検討する。
Ⅱ その他の取組
EPAに基づき受け入れている看護師・介護福祉士候補者の国家試験合格率・合格者数を向上させる観点などから、本検討グループの議論において、①母国語・英語での試験とコミュニケーション能力試験の併用、②看護師・介護福祉士国家試験の出題範囲の適正化、③介護福祉士国家試験の複数回の受験機会の提供、④介護福祉士候補者の定員配置基準換算の見直しについて検討すべきとの問題提起もなされた。これらの諸点の多くは、看護師・介護福祉士制度やそれらの国家試験制度の根本的な変更を惹起するものであることから、その適否について、当該制度の趣旨や患者・利用者への影響、実現可能性等も踏まえつつ、検討を行うこととする。
また、看護師・介護福祉士以外の分野の人の移動に関する各国からの要望については、それぞれの交渉に際して、相手国の要望内容を精査の上、個別に検討を行う。
Ⅲ 今後の対応
今後とも、「人の移動に関する検討グループ」を随時開催し、上記の取組の実施状況を確認するとともに、包括的経済連携に関する基本方針に基づき、更なる取組について引き続き検討を行う。
(以上)