してやったり
先日、珍しい知人から電話があった。
「宮崎さん、明美ちゃん(母のことをそう呼ぶんです)が死んだんです」
「ええっ、体調悪かったの?」
「いいえ、いつものように元気だったんです。それが、その日の夜に、どうも胸が苦しくなったみたい。それで自分で救急車に連絡した。ところが宮崎さんの知っている通り、明美ちゃんが住んでいるのは、民家が全くない山の中腹で一人でるんるんと暮らしていたのです。救急車の到着まで時間がかかったかもしれませんが、着いた時には息は絶えていたそうです」
「まあ、まあ・・・・」
「でもね、宮崎さん。明美ちゃんの顔は、“してやったり”という表情、うっすら笑顔で美しかったですよ。明美ちゃんは、『人の世話にはなりたくない。ここで一人でひっそりと死にたい』とずっといっていたのでたぶん満足だと思います」
20数年前からの知り合いで、豪快で決断が早く、“活きのいいおかみさん”のような明美さん。大好きな明美さん。息子さんといっしょにわがままハウスに遊びに来てくれて、「私が要介護になったらここに入れて。和加ちゃんにいろいろ預けておくわ」と明美さんのコレクション(古民具や絵画)を無期貸し出ししてくださった。
年齢不詳の活きのよさだったが、90歳くらいかもしれない。苦労話も笑って吹き飛ばしていた。“してやったり”そういう息子さんも素敵。献杯ではなく乾杯かな。